「家庭と地域社会における保育のあり方について述べよ。」
1 はじめに
戦後、わが国は、目覚ましい経済成長を遂げ、生活水準は飛躍的に高まり、人々は物質的な豊かさを享受できるようになった。保育所や児童館等の整備が進むなど、安心して子どもを生み育て、また、のびのびと子どもが成長できる環境づくりが着実に図られた。子どもたちはそれまでによりもはるかに物質的に恵まれ、また、大切に育てられるようになった。しかし、その一方で、少子化や核家族化、都市化が急速に進み、それによって、家庭と地域との結びつきが弱まり、地域の中で家庭の孤立化、子育て不安の増大などの問題が生じている。また、児童虐待などの問題が顕在化してきている。
ここでは、現代社会の家庭や地域の変化が、子どもの心理的発達に及ぼす影響について考察し、今後の保育のあり方についてまとめていく。
2 家庭の変化
家庭は、子どもが最も身近に接する社会で、「人間としての生き方の基本を学ぶ場」であり、教育の出発点は家庭である。家庭教育は「人間形成の土台をなすもの」と考えられる。しかし、近年、この家庭の教育力の低下が叫ばれており、その原因として次の点が...