児童福祉論② 済

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    資料紹介

    資料の原本内容

    「近年の児童福祉政策の動向をふまえ、
    児童福祉に関する課題について論述せよ。」
     第2次大戦後の日本は貧しさと混乱の中にあり、街には戦争孤児や浮浪児などがあふれ、非行行為を繰り返すなど生活苦からの救済を必要としていた。そこで政府は、1947年すべての児童の健全な育成のための「児童福祉法」を制定した。児童福祉法は制定されてから半世紀が過ぎ、この間に少子高齢化の波が押し寄せ、共働き家庭の一般化など家庭における子育て機能の低下など、児童を取り巻く環境は大きく変動し、安心して子供を産み、育てることのできる基盤整備と対策が急務となった。1994年には「児童の権利に関する条約」が批進され、子どもの権利保障に向けたより積極的な取り組みが求められている。また、子どもへの最大の権利侵害である、子どもの虐待等の問題も深刻化しており、その対策も重要な課題となっている。さらに、国際連合による、児童の権利条約を採択し、子どもの人権の確保について具体的事項が定められ、こうした背景から児童福祉法の改正(1998年4月から施行)がされた。この改正は、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、児童の健全育成と自立を支援するため、「子ども家庭福祉」制度の構築を目指し、具体的には、保育所支援の仕組みの見直し、児童自立支援や母子家庭施策等の充実が図られ、また、国連の「児童の権利条約」が規定する子どもの最善の利益並びに子どもの意見表明権を尊重した制度が、新たに盛り込まれた。さらに、2001年11月には児童が地域の中で安心して健やかに成長できる環境を整備するために、児童委員活動の活性化、保育士資格の法定化、認可外保育施設に対する監督の強化などが盛られている。
    社会全体での支援策として、1994年に「今後の子育ての支援のための施策の基本方向について(エンゼルプラン)」が策定され、その考えを基に保育サービスに関する具体的整備目標を明らかにし、緊急保育対策5カ年事業の発表、その後の少子化対策に関わる具体的方策の先駆けとなった。この背景には、これまで定着してきた、「3歳児神話」や「母性神話」には合理的根拠が認められないとし、ジェンダー意識に基づいた母親に負担が集中する子育ての在り方の見直しの必要性などの意識改革もあった。また、1990年の合計特殊出生率が丙午の年(1966年)の出生率を下回り1.57ショックと呼ばれ、1993年には1.46と史上最低を記録し、出生率低下の歯止めを目標とした、国の少子化対策推進関係閣僚会議において、従来のエンゼルプランを見直し各種のサービスの充実に加え、相談支援体制、母子保健、教育、住宅等、施策の具体的実施計画として、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」(1999年~2004年)が策定された。このエンゼルプランの「少子化対策」は年々新展開を見せている。その中でも2つの課題を挙げることができる。1つは、女性の社会進出に伴い仕事と家庭の両立の難しさに対し、保育所の整備、多様な保育ニーズにこたえられるようにしていこうというもの、2つめは、核家族化、共働き家庭の増加による親への支援、相談をする子育て支援センターを各地につくっていくとこである。
    また、さらなる少子化対策を推進するため、2002年「少子化対策プラスワン」が報告され、働き方の見直し、地域における子育て支援、子どもの社会性の向上と自立の促進等、視点を子育て家庭に移しているのが特徴で、よりバランスのとれた対策を進めていくために、自治体や企業に行動計画の策定を求める「次世代育成支援対策推進法」や「少子化対策基本法」を2003年に制定した。この基本理念は、父母などの保護者が子育てについての第一義的責務があるという認識の下、子育ての喜びの現実が配慮されなければならないとし、「少子化対策基本法」は施策の基本理念を明らかにし、国や地方自治体の責務などを定めている。また、子育て支援の具体的なものとして、乳幼児を対象とした保育園、児童を対象とした放課後児童健全育成事業とがあるが、しかし、全国には待機児童が存在し、待機児童の減少や社会情勢の変化に伴い、学童保育の対象年齢の引き下げが今後の課題でもある。待機児童の解消については、今後も共働き、ひとり親の増加など、保育園や学童保育の必要性は高まってくる。また、保育所の数が足りない、低年齢の枠が少ないなどで、無認可保育の増加や営利目的でのベビーホテルが各地で作られている。これらの中には、子どもの保育にふさわしくない環境であったり、近年起きている死亡事件があるような無認可施設もあり社会問題となっている。また、施設の指導員の育成、職場の環境改善も重要であり、特に学童保育では、指導員の雇用形態が地域によって常勤、非常勤とばらつきがあり、給与、研修制度にも様々な改善点や市町村で格差があり離職率も高い。保育所制度と比較してみても、保育所には「保育に欠ける乳児、幼児、その他の児童を市町村は保育所において保育しなければならない」との義務規定があるが、学童保育には、市町村の「利用の促進」という努力義務があるも、それ以上の責任がはっきりされておらず、公的制度として改善されなければならないことが数多くある。法整備だけが進んでも、具体的な保育を行う現場にはこのような問題があり、こうした状況が改善されない限りは、本当の意味での子育て支援とは言えないのではないかと考える。
    また、2004年には児童虐待防止対策の充実強化を図るための改正が行われ、児童相談について市町村の役割の見直し、保護を要する児童について家庭裁判所が関与できる仕組みの導入などが行われた。
     児童虐待とは、親または養育者等によって、子どもに加えられた行為で、子どもの心身を傷つけ、健やかな成長・発達を損なう行為をいい、以下の行為が児童虐待であるとしている。①身体的虐待(児童の身体に外相が生じる、また生じる恐れがある暴行を加えること。)②性的虐待(児童にわいせつ行為をする、またはさせること。)③ネグレクト(保護の怠慢・拒否による健康状態や安全を損なう行為。)④心理的虐待(言葉による暴力で心理的に子どもを傷つける行為。)
     一般的に虐待が起こる要因として、親の孤立状態から起こる子育ての不安、夫の非協力や無理解による母親の育児に対するストレス、育児知識不足による不安や誤解が挙げられ、虐待問題を加害者である親と被害者である子といった視点で捉えるのではなく、親自身に対しての治療・支援が必要であるという認識のもと、家族再統合。家族の養育機能の再生・強化を目指した支援が試みられている。例えば、①保育所においての広報や相談、援助を積極的に行う。②虐待が疑われる場合、早期に子の保護者と養育について話し合ったり、悩みを聞いたり等適切なアドバイスをし、必要に応じて児童相談所、保健センターなどの関連機関と連携を図る。③一時預けや育児サロンなどを活用する事で、一時的ではあるが子育てから解放され、自分の時間が持つことができる。④母親教室などによる、子育ての楽しみ方や知識を伝えるなどして子育てを援助する、などが挙げられる。 
     児童虐待は、誰にでも起こり得る問題である。些細なことでも気軽に相談できる場の提供が必要であると考える。最近では大学が地域活動の一環として、子育て相談を開いているところもあり、近年の地域の弱体化が言われる中、今後こうした地域での活動を活発に行い、虐待問題が解決に向かうように他人事とせず、一人ひとりが考えていかなければならない。
    参考著書
    『子どもと福祉』子供・家庭支援論 初版
    2009年 林 浩康著
    福村出版
    下線部本著より、引用す。
    『子ども家庭福祉とソーシャルワーク』
    社会福祉基礎シリーズ⑥ 児童福祉論 第3版
    2007年 高橋 重宏・山縣 文治・才村 純 編著
    有斐閣
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