深読み芥川龍之介(3)「蜜柑」論

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    深読み芥川龍之介(3)「蜜柑」論
    -その技巧的側面についての一考察-
    菊池寛は芸術作品における内容的価値と 形式的価値の厄介な優劣問題について、当時の文壇の芸術至上主義者たちを相 手に 「文芸作品の内容的価値」と、題する評論で以下のような提言をしている。
    ある作品を読んで、うまいうまい と思いながら、心を打たれない。
    他の作品を読んでまずいまずいと思 いながら、心を打たれる。ある作品を読んで、よく描けていると思い ながら、心を打たれない。他の作品を読んで、ちっとも描けていない と思いながら心を打たれる。この二つの場合を、誰でも経験している と思う。文壇有数の名家の作品を読んで、うまいと感心する。が、心 は動かない。投書家程度の人の書いたまずい短編を読んで、 つい心を打たれることがある。
    こんな場合を、どんなに説明した らよいか。芸術作品としては、前者が勝っていること万々であると思 いながら、さて心を動かされるのは、後者であるとしたならば、後者 の持っているものは、何であろう。 、 。 か ある人は 後者には尊い実感が 書いてあるからと云かも知れない、 。 他の人は 後者には得難い体験が...

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