「第9章 教育危機の社会心理」をまとめた上で、現代日本における「教育危機」を例示しなさい。
危機とは「秩序の大きな動揺」である。「秩序」とは安定性や平衡性を保っている状態であるが、様々なレベルの秩序がある。この中の社会秩序の動揺が社会的危機と呼ばれる。教育危機はこの社会的危機の一側面であるが、こんにち、きわめて重大だとみなされている。しかし、教育も含めて社会現象において、正常と異常、健康と病理の区分は絶対的なものではなく相対的なものである。とりわけ変動が大きい場合には、それらの判断基準もきわめてあいまいになってくる。この点を追求していくと、秩序の大きな動揺は新しい秩序の生成を内包しているという側面が浮かび上がってくる。危機は一つの秩序から次の秩序にむけての転換期にほかならず、秩序の崩壊と再組織化ないし創造の両面を持っているのである。
急激な社会変動に伴う危機は、人々に危機意識を抱かせる。この危機意識は次の三つの過程で捉えることができる。(1)社会的危機の事実を認識する段階、(2)その認識によって失望や不安にとらわれる段階、(3)危機を乗り越えようとする段階、である。危機はすべての人...