カントの哲学を、それに至る歴史とともに要約せよ。
「あるものが存在するというのは最も基本的な属性である。神は完全なる存在だから、完全なる存在が最も基本的な属性を欠いているはずはない。したがって、神は存在するのだ」というのが、カントのいうところの「存在論的証明」である。 「ある存在の背後にはそれを作った存在がある」という議論は大きな矛盾を抱え込んでいる。というのは、この議論を突き詰めていくと、「神様は誰が創ったのか」という疑問に行き着くからだ。「神様を創った存在なんかない。神様はこの世界の始まりから終わりまで永遠に存在する」というなら、「宇宙に創り主なんかいなくて、最初からあったと考えられないのか」という反論に答えることはできない。
ルネサンスの哲学からへ一ゲル哲学にいたる近世哲学史を概観すると、カントの哲学は分水嶺であるといわれる。近世哲学はカント哲学以前と以後とに分けられるといってもよい。
まず、カントが問題としているのは人間の認識能力であり、「人間の客観的な認識はいかにして可能なのか」である。カント以前の形而上学では、霊魂や神、世界の始まりなどについて論じていたが、そうした...