文書偽造の罪について

閲覧数3,433
ダウンロード数11
履歴確認

    • ページ数 : 4ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    (本文)
     以下において、Xの刑事責任について検討することにする。
     県立高校の校長であるXはAを合格させるために、入学試験の答案であるAの解答用紙を書き換え、入試委員会に提出している。これだけを見ていくと、偽造罪にあたるだろうという検討はつく。現行刑法には、偽造の罪について、通貨偽造の罪、文書偽造の罪、有価証券偽造の罪、支払い用カード電磁的記録に関する罪、印章偽造の罪、の各犯罪類型がある。今回の事例はこのなかでも文書偽造罪にあたると考えられる。では、文書とはなにかであるが、「文字を用いて、人の意思、または観念を確定的かつ多少とも継続的に表示したもので、法律関係または社会生活上重要な事実関係に関する証拠となり得るもの」である。文書は、公共の信用が生じうるだけの可読性を有しなければならない。文書の概念には広義では図画も含む。
     文書偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用を保護することであるが、その方策としては形式主義と実質主義があり、前者は文書の作成名義の真正性を保護するものであり、有形偽造行為を偽造罪として処罰する立法主義である。有形偽造とは作成名義を偽ることをいう。たとえば、作成権限のない者が勝手に他人の借用書を作成した場合(私文書偽造罪、159条1項)である。文書の成立の真正を保護する形式主義が、有形偽造の処罰につながる。有形偽造は偽造と変造からなっている。偽造は、「作成権限のない者が、他人名義の文書を作成すること」である。文書の本質的部分に変更を加えることも、もはや別の文書を作成したと同視できるので、偽造となる。偽造の方法は問わない、偽造された文書は一般人からみて、正規の作成権限者がその権限内で作成した真正の文書であると誤信させる程度の形式・外観を備えていることが必要である。

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    (本文)
    以下において、Xの刑事責任について検討することにする。
    県立高校の校長であるXはAを合格させるために、入学試験の答案であるAの解答用紙を書き換え、入試委員会に提出している。これだけを見ていくと、偽造罪にあたるだろうという検討はつく。現行刑法には、偽造の罪について、通貨偽造の罪、文書偽造の罪、有価証券偽造の罪、支払い用カード電磁的記録に関する罪、印章偽造の罪、の各犯罪類型がある。今回の事例はこのなかでも文書偽造罪にあたると考えられる。では、文書とはなにかであるが、「文字を用いて、人の意思、または観念を確定的かつ多少とも継続的に表示したもので、法律関係または社会生活上重要な事実関係に関する証拠となり得るもの」である。文書は、公共の信用が生じうるだけの可読性を有しなければならない。文書の概念には広義では図画も含む。
    文書偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用を保護することであるが、その方策としては形式主義と実質主義があり、前者は文書の作成名義の真正性を保護するものであり、有形偽造行為を偽造罪として処罰する立法主義である。有形偽造とは作成名義を偽ることをいう。たとえば、作成権限のな...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。