伝承童話とは神話、伝説、昔話などを素材として子ども向きに書きかえられたお話のことである。この書きかえというのは単なる書きかえではなく、児童の心性にふさわしいように文学性を盛り上げて仕上げていくものである。創作童話は作家が最初から子どものためにという意識のもとに作るものであり、これに対し伝承童話は創作ではなくして再話という網目を通って初めて童話となるのである。伝承童話の素材となるものは上記にもあるような神話、伝説、昔話の三つがある日本における童話の発生は他の説話と同様に、児童を含めた一般民衆の説話の一形態として発展した。今日に残るものとしては「古事記」が最も古いが、そこにはすでに児童文学の特質である教育的要素が発見される。「ヤマタノオロチ」や「天の岩戸」などといった童話的要素をもった説話が数多く記載されている。例えば「ヤマタノオロチ」であるがこれは八つの頭と八つに分かれた尾を持つ怪奇ですさまじい力を持った大蛇がスサノヲノミコトの知略に引っ掛かってついに退治されるという話の筋であるが、この物語の中にはどんな場面でも知恵の働きが大切であるという教育的要素が含まれている。
次に「赤い鳥」に...