人が環境から受ける影響について~アヴェロンの野生児の事例から
1.はじめに
人の発達には、遺伝的要因だけでなく環境の影響によって成る要素が多くある。特に乳幼児期の環境は、その後の発達にも大いに影響してくるため、その重要性は高いと言われる。そこで、人の発達において環境がどのように影響してくるのか、アヴェロンの野生児の事例を通じて述べていきます。
2.アヴェロンの野生児について
アヴェロンの野生児といわれるヴィクトールは1797年、フランスはアヴェロンのラ・コールの森の中で発見された。発見当時の推定年齢は11歳~12歳。彼は幼児期のはじめに捨てられたと見られ、この年齢まで野生化して採集生活を続けて生きていたのである。彼はその後、イタール医師によって育てられた。発見当初は、痙攣性の発作を繰り返し、動物園のある種の動物みたいに絶えず身体をゆすり続け、癇にさわる人に噛みついたりひっかいたりし、世話してくれる人にも全く情愛を示さなかった。また、視線が固定せず、表情がなく、あるものから他のものへ漠然とさまよい、1点にとどまることがなかった。聴覚も、非常に感動的な音楽にも大きな音に対しても無感覚だ...