1981年に誕生した共和党のレーガン政権は、ヴェトナム戦争の敗北やイラン革命によって決定的に揺らいだ「強いアメリカ」の自画像、それに付随する国際的覇権の再確立を目指し、国内外において様々な改革に着手した。このレーガン政権による、新保守主義・新自由主義的な改革は、現在にまで及ぶアメリカの諸政策や社会構造の源流となっていると考えられる。以下では、レーガン政権の諸改革の特徴について、その国内政策を中心に、60年代までの保守主義政権の政策との比較を交えながら、現在のアメリカの諸問題に照らして考えていきたい。
レーガンの新保守主義的改革の最大の特徴は、「非明示的な差別の構造化」であるといえる。つまり、60年代までの保守は、黒人をはじめとした文化的・社会的マイノリティを名指しで「敵」とし、その政策における取扱いの差別を明確化していた一方、レーガン政権における新保守は、一見人種的色彩の無いような抽象的・普遍的な言説の中に、特定の集団を攻撃する論理が潜んでいたということだ。アメリカは冷戦下において、ソ連と対抗する中で「自由・平等」の精神を謳っていたことから、明らかな差別は行えない状況にあったためだ。こ...