カント「永遠平和のために」とフランス革命
今回はカントとフランス革命の関係について、彼がフランス革命後に著した「永遠平和のために」に注目して考える。
1、「永遠平和のために」とフランス革命
カントは1795年、71歳の時に「永遠平和のために」を著した。この論文が書かれた時代は、フランス革命から6年経って、フランスはまだ混乱のさなかにあり、対外戦争においても和平を求めざるをえない状態にあった。一方のドイツ(プロイセン)にあっても、ロシアとオ-ストリアのポ-ランドをめぐる進出に気が気ではなく、フランスと戦争している余裕はなかった。そんな両国の事情から、1795年4月にバ-ゼルでフランスとプロイセンの間に平和条約が結ばれた。この条約によってプロイセンはライン側までをフランスの領土することを認めていた。 この条約の締結が、カントに「永遠平和のために」を執筆させる直接の動機となったのである。というのは、この平和条約が戦争を永久に終わらせるような条約では決してなく、「戦争の原因となるような要素を含んだ」偽りの条約だと思われたので、「...