戦争で語る世界史「アフター・ヴィクトリー」
G・ジョン・アイケンベリー著の『アフター・ヴィクトリー』によれば、戦争に勝利した大国は制度を利用することで自らのパワーを制約し、敗戦国や同盟・追随国の利益を尊重することが、長期的な目で見れば戦勝国の利益になると述べている。しかし、この度のイラク戦争では戦勝国であるアメリカが、圧倒的な軍事力を未だイラクに駐留させ、イラク国民の意思や行動を抑圧しているため、他の中小国からなかなか支持が得られずにいるのが現状である。もちろん、今も自爆テロなどが絶えず、イラク軍の治安維持能力の向上も間に合っていないため、治安が安定しないイラクからアメリカ軍が撤退することは危険である。だからといって、暫定政権を主導的にアメリカが操作していいものだろうか。
米軍主導のCPA(連合軍暫定当局)はイラク統治評議会メンバーを選出したとされる。アメリカとしては占領色を薄くさせるために、旧政権下で反体制派だった主要七派代表のほか法律家や医師らも選出、過半数の十三人は旧政権下で弾圧された多数派のイスラム教シーア派教徒で構成した。「評議会はイラク全体の代表」と印象づけたいCPAは...