平和主義原理の中核は「平和的生存権」であり、これは日本国憲法前文にある「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という文言から導かれる。この中の「恐怖」というのは、この憲法が、第二次世界大戦の惨劇のあとに生み出され、近代立憲国家からの飛躍を目指したものであるところ、大雑把ではあるが、「戦争」のことを指すといっても問題はないだろう。そして、戦争(武力行使)は、結局のところ政府・権力による発動でしか起こりえず、いったん戦争となってしまえば、人権主体・主権主体である国民が戦争への人的手段としての動員対象になる危険性がある。
有事法制の「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」という名称についても問題がある。この名称の中の「国民の安全の確保」という文言は、自衛隊法3 条にはなかったものである。自衛隊3 条は、自衛隊の任務についての規定で、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ」としている。この「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ」という部分をみると守るべき対象は「わが国」である。したがって、国民は人的手
段として動員され、国民が死んだとしても止むを得ないとも解釈できるのである。その意味でこの法律案の名称は一種のごまかしとも思える。
憲法課題レポート 14
1.問題
日本国憲法における平和主義と有事法制について論ぜよ。
2.回答
平和主義原理の中核は「平和的生存権」であり、これは日本国憲法前文にある「われらは、全世界
の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と
いう文言から導かれる。この中の「恐怖」というのは、この憲法が、第二次世界大戦の惨劇のあと
に生み出され、近代立憲国家からの飛躍を目指したものであるところ、大雑把ではあるが、「戦争」
のことを指すといっても問題はないだろう。そして、戦争(武力行使)は、結局のところ政府・権力
による発動でしか起こりえず、いったん戦争...