1990年代における日本経済の長期低迷は、企業収益を圧迫し、企業の年金負担軽減と運用利回りの向上がミクロ、マクロ両面からの課題となっている。また、1985年以降の年金資産運用の分散化・キャピタル化は、企業に総合的なリスク管理を必要とさせてきた。以上のような年金資金の運用利回り向上や総合的なリスク管理策として注目されているものが、年金ALM(Asset and Liability Management)である。以下では、第一に、年金ALMの内容と目的について説明し、第二に、年金ALMが登場した背景要因について、90年代に個別企業が当面してきた経営上の課題を中心に述べることにする。
まず年金ALMの内容と目的についてである。
この年金管理手法は、資産管理(Asset Management)と負債管理(Liability Management)を統合しているところに特徴がある。すなわち、経済・金融の環境予測を前提にしたうえで、資産と負債の両面を総合的に管理し、適切な流動性、収益の拡大化、リスクの最小化を図ろうとするものであるということができる。年金ALMの対象となる年金スポンサーの代表的なものは厚生年金基金、税制的確年金、共済年金などがある。
年金スポンサーの目的は、短期的利益の拡大ではなく、定められた年金給付を確実に行うことであるから、負債側の認識により年金スポンサーの資産運用におけるリスク許容度を明確化する必要がある。こうしたことを前提とすると、年金ALMの具体的な目的は次の3つの政策をバランスさせること、あるいはそのバランスの如何を決めることであるといいうる。すなわち、第一は、どこまで運用リスクが取れるかを検討する運用政策であり、資産配分の決定を内容とする。
企業経営からみた年金ALMの意味
1990年代における日本経済の長期低迷は、企業収益を圧迫し、企業の年金負担軽減と運用利回りの向上がミクロ、マクロ両面からの課題となっている。また、1985年以降の年金資産運用の分散化・キャピタル化は、企業に総合的なリスク管理を必要とさせてきた。以上のような年金資金の運用利回り向上や総合的なリスク管理策として注目されているものが、年金ALM(Asset and Liability Management)である。以下では、第一に、年金ALMの内容と目的について説明し、第二に、年金ALMが登場した背景要因について、90年代に個別企業が当面してきた経営上の課題を中心に...