家具商を営む甲は,乙とタンス1さおを乙に売る契約を締結し,履行期に乙方に届けたところ,乙から受けとることを拒まれた。そこで,甲は,運送業者丙に運送賃を支払ってその運送を依頼し,これを持ち帰って甲の店舗に保管していたところ,地震により右店舗が倒壊したため,右タンスがき滅した。乙が受領を拒んだ理由が,
1 置場所が片付いていないことにある場合
2 右タンスに瑕疵があることにある場合
とに分けて,甲・乙間の法律関係を説明せよ。
小問(1)
1.甲は履行期に乙方にタンスを届けたのであるから、債務の本旨に従った提供をなしており、債務不履行により生じる一切の責任を免れる(492条)。
2.一方、乙はタンスの受領を拒絶しており、受領遅滞(413条)が問題となる。受領遅滞については、その法的性質について争いがある。
(1)この点、債権債務関係は両当事者の信頼の上にたつもので、信義則上受領義務を認めるべきで、条文も債務不履行の規定中に位置することから、受領遅滞の責任は債務不履行責任とする説(債務不履行責任説)もある。しかし、債権はあくまで権利であって義務ではなく、受領遅滞の責任を債務不履行責任と解さなくとも、債務者には弁済供託(494条)、自助売却(497条)などの手段が与えられており、格別不公平はなく、受領遅滞の責任は民法が特に認めた法定責任と解する(法定責任説、判例同旨)。
(2)このように受領遅滞を法定責任と解する以上、その成立には債権者の故意・過失は必要なく、債権者が単に受領しないことで受領遅滞は成立する。本問では、乙はタンスの置き場所がないことを理由に受領を拒絶したのであり、受領遅滞は成立する。
3.ところで、本問のタンスは地震によりき滅しているが、タンスが特定物の場合はもちろん、不特定物である場合にも、甲は現実の提供をなしているから、特定(401条2項)の効果が生じ、債務の内容は当該タンスを給付することに限定されるから、甲の債務は履行不能となる。
家具商を営む甲は,乙とタンス1さおを乙に売る契約を締結し,履行期に乙方に届けたところ,乙から受けとることを拒まれた。そこで,甲は,運送業者丙に運送賃を支払ってその運送を依頼し,これを持ち帰って甲の店舗に保管していたところ,地震により右店舗が倒壊したため,右タンスがき滅した。乙が受領を拒んだ理由が, 1 置場所が片付いていないことにある場合 2 右タンスに瑕疵があることにある場合 とに分けて,甲・乙間の法律関係を説明せよ。
小問(1)
1.甲は履行期に乙方にタンスを届けたのであるから、債務の本旨に従った提供をなしており、債務不履行により生じる一切の責任を免れる(492条)。
2.一方、乙はタンスの受領を拒絶しており、受領遅滞(413条)が問題となる。受領遅滞については、その法的性質について争いがある。
(1)この点、債権債務関係は両当事者の信頼の上にたつもので、信義則上受領義務を認めるべきで、条文も債務不履行の規定中に位置することから、受領遅滞の責任は債務不履行責任とする説(債務不履行責任説)もある。しかし、債権はあくまで権利であって義務ではなく、受領遅滞の責任を債務不履行責任と解...