NMR
核スピン量子数I = 1 /2の原子核に強い静磁場を印加すると、磁気双極子としてふるま
う核スピンには、磁場に対して平行もしくは反平行の状態が現れる。これはゼーマン分裂
として知られており、そのエネルギー差は磁場の強さに比例する。外部から電磁波を照射
すると、原子核はこのエネルギーを吸収・放出し、スピンの状態が変化する。この現象を
核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)という。スピン系において、スピン間の
相互作用(双極子-双極子相互作用)や、原子核周りの化学的な電子状態の違い(化学シフ
ト)は共鳴線に微細構造を与える。そして、これらは系の分子運動によって変調を受け、
その時のスペクトル密度を求めようとするのが NMR 分光法の原理である。
ここでは、NMR の原理と合わせて、熱平衡からずれた磁化の振舞い、すなわち、磁気
緩和について述べる。
2.1 スピンと磁化
1H や
13Cなどの原子核は、スピン角運動量を持ち、それを~I とすると、磁気モーメン
ト µ は次のように表わされる。
µ = γ~I (1)
γは磁気回転比であり、原子核に
NMR 分光法
平成 21 年 1 月 25 日
はじめに
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核スピン量子数 I = 1/2 の原子核に強い静磁場を印加すると、磁気双極子としてふるま
う核スピンには、磁場に対して平行もしくは反平行の状態が現れる。これはゼーマン分裂
として知られており、そのエネルギー差は磁場の強さに比例する。外部から電磁波を照射
すると、原子核はこのエネルギーを吸収・放出し、スピンの状態が変化する。この現象を
核磁気共鳴 (NMR:Nuclear Magnetic Resonance) という。スピン系において、スピン間の
相互作用 (双極子−双極子相互作用) や、原子核周りの化学的な電子状態の違い (化学シフ
ト) は共鳴線に微細構造を与える。そして、これらは系の分子運動によって変調を受け、
その時のスペクトル密度を求めようとするのが NMR 分光法の原理である。
ここでは、NMR の原理と合わせて、熱平衡からずれた磁化の振舞い、すなわち、磁気
緩和について述べる。
2
パルス NMR の基本原理
2.1
スピンと磁化
H や 13 C などの原子核は、スピン角運動量を持ち、それ...