本問は殺人罪(199 条)もしくは傷害致死罪(205 条)の成否が問題となる。そして、乙の死について故意があれば殺人罪、故意がなければ傷害致死罪の構成要件に該当する。それでは、甲には正当防衛による違法性阻却はあるか。
この点、乙は興奮して手を振り上げたに過ぎないので、急迫不正の侵害はなく、誤信した侵害に対する防衛の相当性も欠く。
しかし、甲は急迫不正の侵害があるものと誤信している。
それでは、急迫不正の侵害がないのにあると誤信した者が、誤信した侵害に対する防衛として過剰な防衛行為をした場合、いかなる罪責を問うことができるか。
この点、構成要件該当事実を認識している以上、故意を阻却しないとの説がある。
刑法課題レポート 11
1.問題
甲は、乙と口論中、乙が興奮して手を振り上げたのを自分に殴りかかってくるものと誤信し、
その難を避けようとして、たまたま所持していた日本刀で乙に切りつけたところ、乙は出血多量の
ため、即死した。甲の罪責を論ぜよ。
2.回答
本問は殺人罪(199 条)もしくは傷害致死罪(205 条)の成否が問題となる。そして、乙の死につい
て故意があれば殺人罪、故意がなければ傷害致死罪の構成要件に該当する。それでは、甲には正当
防衛による違法性阻却はあるか。
この点、乙は興奮して手を振り上げたに過ぎないので、急迫不正の侵害はなく、誤信した侵害に
対する防衛の相当性も...