1 株式会社においては、株主が自由にその株式を他人に譲渡できることが原則とされている(旧204条1項/新127条)。
株式会社は社会に散在する大衆資本を結集し、大規模経営をなすことを目的としており、出資を促進するため、株主は出資額の限度でのみ責任を負うという間接有限責任(旧200条1項/新104条)を採用している。また、株主は会社の実質的所有者であるが、会社経営の合理化を図るため、会
社経営は、専門的知識を有する取締役及び取締役によって構成される取締役会に委ねるという体制を採用している(所有と経営の分離)。したがって、会社にとって株主の個性は問題とならないので、株式譲渡を認めても構わない。
他方、株主は出資を確保するために、投下資本の回収手段が重要になる。もっとも、会社債権者保護の見地から、株主には出資の払戻としての退社制度が認められていない(旧84条/新606条、旧89条/新611条 参照)。そこで、株式譲渡を認める必要がある。これにより、株主は第三者
に株式を譲渡し、その代金をもらうことで、実質的に投下資本の回収と同じ効果が得られるのである。
2 しかし、このような株式譲渡自由の原則も、事務処理の便宜・会社経営の健全確保等の要請から、株主の投下資本回収を不当に害さない限り、例外的に譲渡制限が認められている。具体的には、法律による制限、定款による制限、合意による制限である。
[問]株式譲渡は原則自由とされているが、それはなぜか。また、例外的に株式譲渡が制限される場合
について述べなさい。
1 株式会社においては、株主が自由にその株式を他人に譲渡できることが原則とされている(旧20
4条1項/新127条)。
株式会社は社会に散在する大衆資本を結集し、大規模経営をなすことを目的としており、出資を促
進するため、株主は出資額の限度でのみ責任を負うという間接有限責任(旧200条1項/新104
条)を採用している。また、株主は会社の実質的所有者であるが、会社経営の合理化を図るため、会
社経営は、専門的知識を有する取締役及び取締役によって構成される取締役会に委ねるという体制を
採用している(所有と経営の分離)。したがって、会社にとって株主の個性は問題とならないので、
株式譲渡を認めても構わない。
他方、株主は出資を確保するために、投下資本の回収手段が重要になる。もっとも、会社債権者保
護の見地から、株主には出資の払戻としての退社制度が認められていない(旧84条/新606条、
旧89条/新611条 参照)。そこで、株式譲渡を認める必要がある。これにより、株主は第三...