1、イラク派兵違憲訴訟の会が裁判所に求めているのは、派兵に関して違憲立法審査権の発動である。では、そのためにはどのように訴訟を提起すればよいのだろうか。
まず、司法権とは具体的な争訟事件について法を適用し宣言することによってこれを解決する国家作用である。そして、具体的な争訟とは、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)と同義であり、当事者間の具体的な法律関係ないし権利関係の存否に関する争いであり、かつ、それが法令の適用により終局的に解決しうべきものであることをいう。なお、「その他法律において特に定める権限」(同法3条1項後段)をも有すると規定されており、法律で特に定める場合には、具体的な争訟に属さない訴訟であっても司法権を行使することができる。
次に、三権分立・国民主権の原理から、我が国においては具体的な争訟事件の解決に必要な限度で法令等の違憲性を審査する付随的審査制が採られていると解する。故に、憲法問題であっても、それのみを争えるわけではなく、常に通常の事件に付随して提起されることになる。具体的には、刑事事件・民事事件・行政事件に付随して、憲法問題が争われる。
以上より、イラク派兵に関して何らかの形で刑事事件・民事事件・行政事件に関わるように提起しなければならず、加えて、それが争訟性の要件を満たすものでなければならない。
2、さて、派兵に関して違憲立法審査権を発動させるためにどのような根拠でどのような請求ができるか。(1)自衛隊のイラク派兵が決定されたがまだイラクに派兵される前の段階と、(2)自衛隊がイラクに派兵されて現に駐留している段階にわけて以下検討する。
3、(1)の場合。
ア 自衛隊をイラクに派兵したのは、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下イラク特措法とする。)によるものである。そこで、第一として、イラク特措法により自衛隊をイラク及びその周辺地域並びに周辺海域に派兵してはならないとして派兵差止を請求することが考えられる。
憲法訴訟論
問題
イラク派兵違憲訴訟の訴えの趣旨を読み出し、(1)自衛隊のイラク派兵が決定されたがまだイラクに派兵される前の段階と、(2)自衛隊がイラクに派兵されて現に駐留している段階とに分けて、原告となると仮定した場合にどのような請求内容および理由を主張することが可能か、類似の訴訟・判決などを参考にしたうえで、まとめなさい。
1、イラク派兵違憲訴訟の会が裁判所に求めているのは、派兵に関して違憲立法審査権の発動である。では、そのためにはどのように訴訟を提起すればよいのだろうか。
まず、司法権とは具体的な争訟事件について法を適用し宣言することによってこれを解決する国家作用である。そして、具体的な争訟とは、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)と同義であり、当事者間の具体的な法律関係ないし権利関係の存否に関する争いであり、かつ、それが法令の適用により終局的に解決しうべきものであることをいう。なお、「その他法律において特に定める権限」(同法3条1項後段)をも有すると規定されており、法律で特に定める場合には、具体的な争訟に属さない訴訟であっても司法権を行使することができる。
次に、三権...