一方、アメリカの老人ホームでは、日本の老人ホームに比べて働いてる職員数が多いこと、医師ではなく看護師(ナース・プラクティショナー)、理学療法士、作業療法士、言語療法士、レントゲン技師等のコ・メディカル職員(医師以外で、医療の仕事に携わる専門家)の活躍が挙げられる。このなかでも特に、ナース・プラクティショナーは、時間のない医師にかわり、高齢者の健康状態を、時間をかけて、分りやすく、高齢者と家族に説明するというような、「医師と高齢者の間のコミュニケーション調整役」を担っている。
また、アメリカの老人ホームでは、音楽療法、絵遊び、折り紙等を取り入れ、寝たきりで言葉も不自由な高齢者に対しても、積極的に話しかけたりして、機能維持・回復訓練を行う方法が発達している。
食事の時には、男性も女性もおしゃれをして食堂に集まり、食事を楽しんだり、気持ちを切り替えさせ、人間らしい生活を楽しく過ごすことにも重点をおいている。このようなサービスの質が日本の老人ホームとの相違点である。
また、アメリカと日本の福祉施設を比較した場合、アメリカでは福祉施設や医療施設(病院等)の競争原理が浸透している。競争原理があるために、評判の良い優れた施設は費用は高いが、内容や質が良いので、病気が治れば結果的には安上がりになるという考え方である。
日本とアメリカの老人ホームの特色や相違点について概説し、わが国の老人福祉施設をめぐる今日的課題について述べなさい。
わが国の人口構成は、少子・高齢化の予想外の進展も相まって急速に変化している。 総務庁の推計によると、日本の高齢人口は2,116万人で、総人口の16.7%を占め、国民の6人に1人が高齢者となっている。つまり、日本は高齢社会の段階に突入しているのである。高齢人口のうち65~74歳を前期高齢、75歳以上を後期高齢という。一般に、人口高齢化の進行に伴って、高齢人口の中で後期高齢人口が占める割合は高くなる。わが国では人口高齢化が急速であるだけに、後期高齢人口の増加も速い。後期高齢人口の増加は、寝たきりや痴呆の高齢者の急増をもたらし、医療・保健・福祉のニーズを一層増大させる。 日本の高齢者に対する福祉サービスは、専門的な介護を提供する側の人材不足や、整備が不十分な面も見られたため、十分なサービス(介護サービス、病気の予防、リハビリテーション)ができてないのが現状であった。
また、施設利用者のサービススジュールは施設職員のスケジュールに合わせたあまり自由がないものであると言えるだろ...