ローカル・デモクラシーについて
20世紀末から「国家・家庭の必要性」に加えて「地域という社会の必要性」が生じ、「社会の主義」を求める運動が起きた。その「社会の主義」を求める運動は私たちの身近なところではNPOという市民活動の中に見ることができる。この場合NPOはNGOの性格をも内包した「非政府(=国家ではない)」かつ「非営利(=企業ではない)」的組織を意味する。
それではNPOが求められるようになった理由は何なのだろうか。
20世紀はアダムスミスから始まってケインズにいたるまでの時代、政府と市場の2者間の線引きがシフトしてはいたものの、可能な限り諸問題をこの2つの原理のみで解決しようとした時代であった。
しかし21世紀になると政府と市場のみでは解決できない事態、つまり一部の人々や特定の組織が権限や情報という社会的資源を独占していては解決できない状況が発生し、社会的資源の非集中化・分権化が成立する社会(=分権型社会・非集中化社会)が強く求められた結果として「ローカル」という地域社会が必要とされ始めた。
この「分権化」の流れを具体的に見て行くと「上からの分権」と「下からの分権」という2つの流れが見えてくる。その内容と背景・特徴について以下に説明する。
「上からの分権」とは国家の財政赤字とグローバル化が進行する中で国家と市場が弱体化した結果、新しい政治の枠組みが必要とされて起きた中央政府→地方政府への権限委譲のことであり、つまり政府からの独立(=地方分権)のことである。一方、「下からの分権」についてだが、これは学歴等の差異の減少に伴って市民間での政治・経済への接近可能性においても差異がなくなって平準化社会が到来した。そしてその平準化社会の到来によって、社会的資源(雇用機会・情報等)の独占禁止を求める生活要求が起きた結果であると言える。つまり市民の間での社会的資源の共有が求められるようになったのだ。
またこのように考えてみると、分権化(=非集中化)は新たな側面でのデモクラシーを論じていることがわかる。それは「上からの分権化」は法と罰則によって実現可能な「組織としてのデモクラシー」であるのに対し、「下からの分権化」は当事者意識の改革によってのみ実現可能な「状況としてのデモクラシー」によるものであるということだ。
それでは具体的に「地域という社会」を担い、作っていくのは誰なのであろうか。それは先にも出てきたNPOである。NPOは国家と市場だけでは機能しなくなった社会に国家と市場に代わるものとして、あるいはその機能を補完するものとして登場した。
よってNPOは国家と市場の両方の機能を持つ必要があり、つまりNPOは非政府組織としての政府性(ガバメンス)と非営利組織としての営利性を両方備えていることが求められる。
NPOは「政府から独立」した「非営利」組織であることに違いはないが、組織が組織である以上ガバメンス機能と営利性は不可欠なのだ。
そして、NPOにはもう1つ重要な役目がある。
昔は地域に人口が多く、また1家族あたりの人数も多かったため、トラブルが発生した際にも助けとなってくれる人が多数存在した。しかし現在核家族化が進む中で、かつて地域の持っていたこのはたらきは機能していない。「地域性(社会性)」ともいうべきこの機能を担うのがNPOなのである。
ではそのNPOを形成するにはどのような方法があるのかを考えて行くと、次の3つが挙げられる。すなわち①新たなNPO化型、②企業のNPO化型、③政府のNPO化型である。まず①新たなNPO化型は個々の必要・問題に応じてNP
ローカル・デモクラシーについて
20世紀末から「国家・家庭の必要性」に加えて「地域という社会の必要性」が生じ、「社会の主義」を求める運動が起きた。その「社会の主義」を求める運動は私たちの身近なところではNPOという市民活動の中に見ることができる。この場合NPOはNGOの性格をも内包した「非政府(=国家ではない)」かつ「非営利(=企業ではない)」的組織を意味する。
それではNPOが求められるようになった理由は何なのだろうか。
20世紀はアダムスミスから始まってケインズにいたるまでの時代、政府と市場の2者間の線引きがシフトしてはいたものの、可能な限り諸問題をこの2つの原理のみで解決しようとした時代であった。
しかし21世紀になると政府と市場のみでは解決できない事態、つまり一部の人々や特定の組織が権限や情報という社会的資源を独占していては解決できない状況が発生し、社会的資源の非集中化・分権化が成立する社会(=分権型社会・非集中化社会)が強く求められた結果として「ローカル」という地域社会が必要とされ始めた。
この「分権化」の流れを具体的に見て行くと「上からの分権」と「下からの分権」という2つの...