太陽光発電の現状と展望

閲覧数5,090
ダウンロード数53
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 全体公開

    資料紹介



     











    30 日本貿易会 月報
    1.はじめに
    京都議定書の発効を機に、地球環境保全意識
    は一層高まりを見せており、温暖化防止のため
    にCO
    2等の削減が重要な課題となっています。
    一方、化石エネルギー埋蔵量の限界とエネルギ
    ー消費の増大によるエネルギー資源の枯渇によ
    り、環境にやさしい再生可能エネルギーの創出
    が急務で、太陽光発電システムは、世界各国で
    注目を集めており、導入量が急増しています。
    2.太陽光発電とは(仕組みと概要)
    現在主流の材料は、半導体のシリコンであり、
    N型とP型の異なる電気的性質の半導体を一つ
    にした構造で、光エネルギーにより電子(-)
    と正孔(+)が生まれ、それぞれがN型/P型
    シリコンに多く集まり、外部負荷へ電流を流す
    ことができます。
    このため太陽光発電の最大の特長は、自然に
    ふり注ぐ太陽の光を利用した環境にやさしい発
    電システムであることですが、①半導体の電子
    と正孔の動きにより発電するためクリーンで静
    かであり、排出物(CO
    2)を出さないこと、②
    エネルギー輸送のインフラ整備がいらないこと
    (屋根を有効活用し自家発電)、③建材としても
    活用できることなどがあります。
    太陽電池にはさまざまな種類があり、主流は
    単結晶、多結晶、シリコン、アモルファスシリ
    コン、結晶薄膜ですが、一部宇宙用などに化合
    物系も実用化されています。
    発電の仕組みとしては、昼間発電した余剰電
    力を電力会社へ戻し、夜間電力会社から消費分
    を使用し売買を行う系統連系方式と、蓄電池と
    の併用で独立型の運営を行う独立型方式の仕組
    みがあり、これらにより設置のバリエーション
    が広がっています。
    3.太陽光発電の市場動向
    太陽電池の生産量は、年々増加しており、
    2004年の太陽電池生産量は、(PV News調べ)
    図のように1MW級に達しました。
    国別の生産量は日本が市場をリードした形と
    なっていますが、欧州特にドイツが政府指導
    (電力買取制度)の下、急伸しつつあります。
    また、需要地域については累積設置容量により、
    日本、ドイツ、米国が大きなウェイトを占めて
    いましたが、今後の需要を考えた場合、これら
    以外に中国、インドなどのアジアでその電力事
    情から拡大が期待されます。
    また今後、太陽光発電システム機器の導入に
    加え、排出権取引を活用した新しいビジネスチ
    ャンスも創出される可能性があります。
    4.当社の太陽光発電への取り組み
    当社は、1959年に開発を開始し、1960年代よ
    り海上保安庁の灯台用電源に納入し、航路の標
    識として長年活用されています。また、人工衛
    星用太陽電池では、JAXA(宇宙航空研究開発
    機構)の支援の下、国内の衛星に搭載されてい
    太陽光発電の現状と展望
    松 井 美 憲(まつい よしのり)
    シャープ株式会社
    ソーラーシステム事業部 企画部課長

    稿
     

























    2005年12月号 No.632 31
    ます。太陽光発電の本格的な普及拡大は、1994
    年の住宅用太陽光発電の導入開始からで、以降
    住宅用、産業用に生産量の拡大およびアプリケ
    ーションの拡大により市場創造に努めていま
    す。
    5.設置の例
    太陽光発電システムの設置にはさまざまなシ
    ーンがあります。前述の灯台、人工衛星から一
    般家庭の住宅用太陽光発電システム、公共産業
    としてのビルへの設置、発電電力プラントなど
    に広がっています。また最近

    資料の原本内容















    太陽光発電の現状と展望
    松井

    美 憲(まつい よしのり)

    シャープ株式会社
    ソーラーシステム事業部

    企画部課長

    コン、結晶薄膜ですが、一部宇宙用などに化合
    物系も実用化されています。
    発電の仕組みとしては、昼間発電した余剰電
    力を電力会社へ戻し、夜間電力会社から消費分

    1.はじめに

    を使用し売買を行う系統連系方式と、蓄電池と

    京都議定書の発効を機に、地球環境保全意識

    の併用で独立型の運営を行う独立型方式の仕組

    は一層高まりを見せており、温暖化防止のため

    みがあり、これらにより設置のバリエーション

    にCO 2 等の削減が重要な課題となっています。

    が広がっています。

    一方、化石エネルギー埋蔵量の限界とエネルギ
    ー消費の増大によるエネルギー資源の枯渇によ

    3.太陽光発電の市場動向

    り、環境にやさしい再生可能エネルギーの創出

    太陽電池の生産量は、年々増加しており、

    が急務で、太陽光発電システムは、世界各国で

    2004年の太陽電池生産量は、(PV News調べ)

    注目を集めており、導入量が急増しています。

    図のように1MW級に達しました。
    国別の生産量は日本が市場をリードした形と

    2.太陽光発電とは(仕組みと概要)

    なっていますが、欧州特にドイツが政府指導

    現在主流の材料は、半導体のシリコンであり、

    (電力買取制度)の下、急伸しつつあります。

    N型とP型の異なる電気的性質の半導体を一つ

    また、需要地域については累積設置容量により、

    にした構造で、光エネルギーにより電子(−)

    日本、ドイツ、米国が大きなウェイトを占めて

    と正孔(+)が生まれ、それぞれがN型/P型

    いましたが、今後の需要を考えた場合、これら

    シリコンに多く集まり、外部負荷へ電流を流す

    以外に中国、インドなどのアジアでその電力事

    ことができます。

    情から拡大が期待されます。

    このため太陽光発電の最大の特長は、自然に

    また今後、太陽光発電システム機器の導入に

    ふり注ぐ太陽の光を利用した環境にやさしい発

    加え、排出権取引を活用した新しいビジネスチ

    電システムであることですが、①半導体の電子

    ャンスも創出される可能性があります。

    と正孔の動きにより発電するためクリーンで静
    かであり、排出物(CO2)を出さないこと、②

    4.当社の太陽光発電への取り組み

    エネルギー輸送のインフラ整備がいらないこと

    当社は、1959年に開発を開始し、1960年代よ

    (屋根を有効活用し自家発電)、③建材としても

    り海上保安庁の灯台用電源に納入し、航路の標

    活用できることなどがあります。

    識として長年活用されています。また、人工衛

    太陽電池にはさまざまな種類があり、主流は

    星用太陽電池では、JAXA(宇宙航空研究開発

    単結晶、多結晶、シリコン、アモルファスシリ

    機構)の支援の下、国内の衛星に搭載されてい

    30 日本貿易会 月報

    図1 世界の太陽電池生産量と設置量
    (MW)
    1,250

    合計:1,194.7MW

    1,000

    ドイツ
    794.0 MW
    761

    2004年
    累積設置量
    2,596MW

    750





    日本
    1,132.0
    MW

    日本:601.5MW
    日本

    米国
    365.2 MW

    562

    米国

    500

    391

    欧州

    288
    207

    その他
    250

    合計
    69 80 89
    47 55 58 60

    126 153

    欧州:314.4MW

    (出所)IEA PVPS

    その他:140.1MW
    米国:138.7MW

    0
    1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004(年)
    (出所)PV NEWS 2005年4月号PV NEWS(Vol24 No.4)

    ます。太陽光発電の本格的な普及拡大は、1994

    設置の制限が少なく簡単にエネルギーが得ら

    年の住宅用太陽光発電の導入開始からで、以降

    れ、ランニングコストの少ない太陽電池は、今

    住宅用、産業用に生産量の拡大およびアプリケ

    後ますますの設置が期待されます。

    ーションの拡大により市場創造に努めていま
    す。

    6.今後の普及課題と展望


    稿

    市場の急拡大と半導体市場の活発化によりシ

    5.設置の例

    リコン材料不足が発生しており、これに対応す

    太陽光発電システムの設置にはさまざまなシ

    るため、結晶系太陽電池セルの薄型化、シリコ

    ーンがあります。前述の灯台、人工衛星から一

    ン材料の使用が少ない薄膜太陽電池の導入が必

    般家庭の住宅用太陽光発電システム、公共産業

    要となってきます。また、変換効率の飛躍的向

    としてのビルへの設置、発電電力プラントなど

    上を図る集光型システムの開発導入も今後の市

    に広がっています。また最近、瓦一体型等の建

    場拡大の重要な要素となります。

    材一体型として建物に溶け込む用途が増えてき
    ています。
    さらに、LED(発光ダイオード)と組み合わ

    さらに、システム構成機器であるパワーコン
    ディショナー高効率化もトータルシステム効率
    を上げるため重要なテーマとなります。

    せた「光る太陽電池:ルミウォール」薄膜太陽
    電池などの新カテゴリーで今後需要が創出され
    てくると考えられます。

    7.おわりに
    地球環境の保全、エネルギー資源枯渇への対

    2005年12月号

    No.632

    31









































    策のため、地球規模で太陽光発電システムはま

    入、さらにシステム効率の向上等が重要になっ

    すます重要な新エネルギーのひとつとして期待

    てきます。未来を築く新エネルギーとして、太

    が高まっています。その期待に応えるため、太

    陽光発電の技術開発および市場導入が進められ

    陽電池の高効率化、薄型化、薄膜太陽電池の導

    ています。

    参考資料.新エネルギーの位置付け
    技術レベル等

    エネルギー

    エネルギーの利用形態

    石油
    実 用 化 段 階にあり、
    経済性上競争力があ
    り、普及しているもの

    石油代替エネルギー
    石炭
    天然ガス
    原子力

    再生可能エネルギー

    自然エネルギー

    リサイクルエネルギー

    水力発電 地熱発電

    太陽光発電








    実用化段階にはある
    が、経済性上制約が
    あり、十分に普及して
    いないもの

    風力発電

    バイオマス発電
    廃棄物発電
    バイオマス熱利用
    バイオマス燃料製造
    廃棄物熱利用

    太陽熱利用 (エネルギー

    作物)
    雪氷熱利用

    実用化されていない
    もの

    (出所)資源エネルギー庁資料より作成

    32 日本貿易会 月報

    波力発電
    海洋温度差発電

    (黒 液) 廃棄物燃料
    (廃 材) 製造
    (バイオガス)
    (木 屑) 温度差
    (汚 泥) エネルギー
    (糞 尿)

    クリーンエネルギー
    自動車
    天然ガス
    コージェネレーション
    燃料電池








    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。