1、 目的
(ⅰ)実験結果の統計的な処理 … リレー(継電器)の作動時間を例として確率的に発生する現象を多数回測定し、結果の処理と、正規分布についての理解を深める。
(ⅱ)最小二乗近似 … サーミスタの抵抗の温度依存性を測定し、最小二乗近似を用いて実験結果の整理方法について理解を深める。
2、 原理
2.1 度数分布
電気工学において現れる現象には、確率的な分布をするものがあり、実験を多数
回繰り返すと似通った値が得られることがわかる。このような場合、測定値の分布
が重要である。また、出現頻度分布を表すために、度数分布表、累積度数表、ある
はこれらを図で表したヒストグラム、累積度数グラフなどが用いられる。また、分
布の中心を平均値、メジアン、モード、分布の広がりを表わす散布度として分散、
標準偏差などが用いられる。
2.2 正規分布と正規確率紙
平均値m、標準偏差σの正規分布の確率密度関数f(x)は、
F(x)={1/(√(2π))σ}exp[-(x-m)2/2σ2] で表わせる。また、正規確率紙は横
軸を平等目盛、縦軸を標準正規分布(m=0、σ=1)の分布関数F(x)、つまり
F(x)=∫ {1/(√(2π))σ}exp[-t2/2] dt (-∞ → x )
の関数尺とした方眼紙である。正規確率紙上では正規分布の分布関数は直線とな
るので、直線性から正規分布に従っているかどうか判定できる。
2.3 対数方眼紙
縦軸、横軸の一方を対数目盛にした方眼紙を片対数方眼紙、両方を対数目盛りにしたものを両対数方眼紙という。測定結果が広範囲にわたるとき、また変化の傾向が直線的でないときに用いると都合がよい。
2.4 最小二乗法による実験式のあてはめ
電気抵抗の温度変化が10℃において10Ω、20℃において100Ω、30℃において1000Ωだとすると、抵抗R(Ω)は温度T(℃)によりR=10T/10と表わすことができる。このように結果を表わしておくと任意の温度の抵抗を計算で求めることができ、都合がよい。例えば、TとRについてn組の測定値が得られたとして、それらが(t1、r1)、(t2、r2)、…、(tn、rn)とする。これらに最小二乗法を用いて実験式
r=at+bを求めるとすると、すべての測定値について差の二乗の総和が最小とな
1
るようにa、bを決定するので、Σ{ri-(ati+b)}2が最小であればよい。これをaおよびbで偏微分してそれぞれを0とおき、a、bを求めると、
a=(nΣtiri-ΣtiΣri)/{nΣti2-Σ(ti)2}
b=(Σti2Σri-ΣtiΣtiri)/{nΣti2-(Σti)2}
となる。
2.5 使用する部品・装置の概説
2.5.1 リレー(継電器)… 電気エネルギーを入力し、出力で他の電気回路の開閉を制御する部品。実験で用いるものは、電磁石に電流を流すと可動接点が電磁石により吸引されて下側の固定接点と接触し、電流を絶つとばねの力により上側の接点と接触するようになっている。
2.5.2 ユニバーサルカウンタ … 時間と周波数に関する様々な測定を行うための測定器。一般に高精度の基準周波数発振器を内蔵し、極めて高確度の測定ができる。実験では時間間隔測定機能を使用する。
2.5.3 サーミスタ … 温度変化によって電気抵抗が大幅に変化する半導体素子で、主に温
1、 目的
(ⅰ)実験結果の統計的な処理 … リレー(継電器)の作動時間を例として確率的に発生する現象を多数回測定し、結果の処理と、正規分布についての理解を深める。
(ⅱ)最小二乗近似 … サーミスタの抵抗の温度依存性を測定し、最小二乗近似を用いて実験結果の整理方法について理解を深める。
2、 原理
2.1 度数分布
電気工学において現れる現象には、確率的な分布をするものがあり、実験を多数
回繰り返すと似通った値が得られることがわかる。このような場合、測定値の分布
が重要である。また、出現頻度分布を表すために、度数分布表、累積度数表、ある
はこれらを図で表したヒストグラム、累積度数グラフなどが用いられる。また、分
布の中心を平均値、メジアン、モード、分布の広がりを表わす散布度として分散、
標準偏差などが用いられる。
2.2 正規分布と正規確率紙
平均値m、標準偏差σの正規分布の確率密度関数f(x)は、
F(x)={1/(√(2π))σ}exp[-(x-m)2/2σ2] で表わせる。また、正規確率紙は横
軸を平...