環境関係犯罪とその対策について
環境関係犯罪とは、事業活動や人の活動によって、生活環境、自然環境、地球環境等を破壊することにより、人類生存の基礎である有限な環境が環境負担により損なわれ、人の生命、身体に相当範囲にわたる被害を生じさせる行為である。具体的には、自然公園法違反、大気汚染防止法違反、水質汚濁防止法違反、海洋汚染防止法違反及び廃棄物処理法違反等の各環境関係特別法犯など環境汚染や環境破壊行為である。
この環境犯罪における犯罪学的特色の中には、企業活動に伴って行われる場合が多いことが認められている。それは、環境犯罪の典型的なもの(工場からび有害物質の排出、有害廃棄物の投棄など)は、企業活動に伴って犯されているにもかかわらず、一般的に、企業の公害防止における費用の支出は、できる限り抑制しようとする傾向であることから、環境犯罪の被害を甚大なものにしているのである。
このような環境に対して行われる大規模な企業の暴力的行為を米国の学者リンチ(MichaelJ.Lynch)は、「グリーン犯罪」という言葉で表わした。
ここでの「企業の暴力的行為」とは、企業犯罪のうち、企業それ自体を利得させることを目指す有形力の行使をいい、「環境に対する企業の暴力犯罪」とは、企業暴力によって大規模な被害又は被害者を生み出す類型の犯罪のみならず、野生生物や環境に対する害を生じさせる犯罪をものである。即ち、環境に対して行われる企業の大規模な破壊行為を、個人の暴力的破壊行為から区別するものとして、この「グリーン犯罪」という概念で提示されたのである。
我が国の環境法制の推移を展望すると、その中心的課題は、このような企業活動によって犯される公害問題であった。これは我が国特有の事情によるものとも考えられるが、公害対策基本法と自然環境保全法の二法に分かれていた我が国の環境法制において、1960年代以降の深刻な環境汚染被害に対応することが、自然環境保護政策よりも緊急な課題とされたため、1980年代に至るまで、公害被害の救済と公害防止が我が国の環境政策の中心を占めていた。まず、我が国は、産業復興に伴って生じた公害問題に対応するため、公害防止条令を制定し、その後1967年に、公害対策基本法を制定して、行政が取り組むべき公害の範囲を明らかにするとともに、行政上の目標となる環境基準を定め、人の健康や生活環境を守るために総合的な対策を進める方針を確立した。 この基本法を受けて、1970年には、今日の公害規制の基になっている14の法律(①公害対策基本法、②大気汚染防止法、③騒音規制法、④自然公園法、⑤農薬取締法、⑥下水道法、⑦道路交通法、⑧毒物及び激物取締法、⑨水質汚濁防止法、⑩農地用の土壌の汚染防止等に関する法律、⑪公害防止事業費事業者負担法、⑫廃棄物の処理及び清掃に関する法律、⑬海洋汚染防止法、⑭人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律)の制定や改正が実現した。公害対策を推進するとともに自然保護対策を含めた環境行政を一元的に行うため、環境庁が設置されたのもこの頃である。
環境庁設置後の環境行政政策として注目すべきものは、規制の対象の拡大に加えて、工場又は事業場の集中する地域において、排出源の規制のみでは環境基準の達成が困難な場合、地域の汚染物質の排出全体を規制する方法として、総量規制が導入されたことである。また更に、「公害健康被害補償法」の制定など、健康被害補償の制度化も行われた。 しかし、汚染による損害を回復するための法律として、公害健康被害補償法、公害防止事業費事業者負担法や、また、紛争
環境関係犯罪とその対策について
環境関係犯罪とは、事業活動や人の活動によって、生活環境、自然環境、地球環境等を破壊することにより、人類生存の基礎である有限な環境が環境負担により損なわれ、人の生命、身体に相当範囲にわたる被害を生じさせる行為である。具体的には、自然公園法違反、大気汚染防止法違反、水質汚濁防止法違反、海洋汚染防止法違反及び廃棄物処理法違反等の各環境関係特別法犯など環境汚染や環境破壊行為である。
この環境犯罪における犯罪学的特色の中には、企業活動に伴って行われる場合が多いことが認められている。それは、環境犯罪の典型的なもの(工場からび有害物質の排出、有害廃棄物の投棄など)は、企業活動に伴って犯されているにもかかわらず、一般的に、企業の公害防止における費用の支出は、できる限り抑制しようとする傾向であることから、環境犯罪の被害を甚大なものにしているのである。
このような環境に対して行われる大規模な企業の暴力的行為を米国の学者リンチ(MichaelJ.Lynch)は、「グリーン犯罪」という言葉で表わした。
ここでの「企業の暴力的行為」とは、企業犯罪のうち、企業それ自体を利得させるこ...