歴史上「刑事罰による懲戒や威嚇」は、最も一般的な犯罪抑止策として、広く社会に受け入れられてきた。かつては少年に対してもこの方策が取られてきたわけであるが、発達上の問題や劣悪な生育環境を背景とする少年非行の場合、刑罰より、むしろ適切な環境で少年を保護し教育を加えた方が、少年は更生しやすく、結果的に安全な社会を作ることにもつながることがわかってきた。その結果、各国では特別な少年法制を敷くようになり、日本においても成人とは別の福祉的・教育的処遇を原則とする現行少年法が制定され、多くの非行少年の再教育に大きな成果をあげてきた。
その一方、大きな罪を犯し、他人の権利を侵害した少年に対し、刑罰を課さず、保護(処分)を加えるという考え方は、社会感情としては受け入れにくかった。昨今、少年の重大事件に対する社会感情を背景として、刑罰適用年齢を16歳から14歳に引き下げられた。これは、保護主義から刑罰優先主義への復古を期待する根強い主張のあらわれであるといえるだろう。
10月31日、衆院本会議で少年法改悪案が可決された。主な内容は、刑事処分適用年齢の下限を16歳から14歳に引き下げ、故意の犯罪で人を死亡させた16歳以上の少年事件は検察官送致を原則とするなど、厳罰主義を基調としている。しかし、その根拠とされる「少年犯罪の深刻化」、「厳罰化」の効果、少年犯罪の原因など、基本的な事項の検討をなおざりにした今回の改悪は、あまりにも拙速といえる。
厳罰化を求める人たちの考え方は、「厳罰で威嚇すれば、少年に刑事責任を明確に分からせることができ、非行抑止にもなる」というものだ。しかし、重大な非行を犯す少年ほど、ストレスにさらされて性格の歪みもひどく、正常な価値判断ができない状態に陥っている。したがって、非行場面で罰の軽重を冷静に考えられる状態にはないのだ。
歴史上「刑事罰による懲戒や威嚇」は、最も一般的な犯罪抑止策として、広く社会に受け入れられてきた。かつては少年に対してもこの方策が取られてきたわけであるが、発達上の問題や劣悪な生育環境を背景とする少年非行の場合、刑罰より、むしろ適切な環境で少年を保護し教育を加えた方が、少年は更生しやすく、結果的に安全な社会を作ることにもつながることがわかってきた。その結果、各国では特別な少年法制を敷くようになり、日本においても成人とは別の福祉的・教育的処遇を原則とする現行少年法が制定され、多くの非行少年の再教育に大きな成果をあげてきた。
その一方、大きな罪を犯し、他人の権利を侵害した少年に対し、刑罰を課さず、保護(処分)を加えるという考え方は、社会感情としては受け入れにくかった。昨今、少年の重大事件に対する社会感情を背景として、刑罰適用年齢を16歳から14歳に引き下げられた。これは、保護主義から刑罰優先主義への復古を期待する根強い主張のあらわれであるといえるだろう。
10月31日、衆院本会議で少年法改悪案が可決された。主な内容は、刑事処分適用年齢の下限を16歳から14歳に引き下げ、故意の犯罪で人を死亡さ...