ヴィクトリア時代の小説について

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    ヴィクトリア時代の小説について、当時の社会背   景なども考慮しながら述べよ。  ヴィクトリア時代はヴィクトリア女王が即位した1837年ごろから、南アフリカで1899年にボーア戦争が勃発するころまでを指す。社会の変化の観点から、初期(1837 -50)、中期(1850-70年代)、後期(1870年代-1901)の3期に分類されることが多い。ヴィクトリア時代の特色である中流階級の支配は、1832年の第一次選挙法改正によって下流階級の人々にも参政権が与えられたことによる。19世紀始めは新しい時代の幕開けであり、ヴィクトリア女王の即位から約60年間、イギリスは安定した秩序を保ちつつ目覚しく発展した。社会的には産業の発達と物の発達が大きく変化した時代であった。初期、石炭の発掘や蒸気機関の発明により、紡績業と製鉄業が盛んになる。いわゆる産業革命である。中期には自由貿易体制が整えられ、イギリス帝国は絶頂期を迎える。  しかし、この急速な発展は内的矛盾をはらんでいた。女王即位直後は「飢餓の40年代」と呼ばれ、食料不足が深刻な様相を呈していたし、これが労働階級の政治的発言力の強化を目的とする人民憲章運動と絡み合った。この運動により中流階級に続き、労働階級の政治的権利を拡張していく道を辿らざるを得ず、1867年には第二次選挙法改正案、1871年には第一次労働組合法が成立するなど民主主義は発展の一途を辿る。また宗教的には、生殖の権威や儀式を尊ぶオックスフォード運動や、キリスト教社会主義の形をとった穏健な福音主義を唱えるブロード・チャーチ運動が盛り上がる。そしてダーウィン(Charles Darwin, 1809-82)が『種の起源』を1859年に公表すると、この適者生存という生物進化の主張はキリスト教信仰に大きな衝撃を与えた。こうして富と便工と文化に対する自己満足的な態度を特徴とするヴィクトリアニズムは隆盛を見せたが、1880年以降は急速に衰退していく。後期には、産業革命の成功で「世界の工場」と言われたイギリスも、アメリカやドイツなどの資本主義の発展と工業力の向上により、その地位が揺らいでいった。そして1899年南アフリカでボーア戦争が勃発、1901年のヴィクトリア女王の逝去までにはイギリスの輝かしい時代は終わりを告げる。  ヴィクトリア時代の人々は科学の発達と物質文明の隆盛を喜び、産業革命による農業国から工業国への転身と文明開化に満足していた。人類の更なる進歩のために機械を崇拝し科学的な発達に希望を持ち、物質文明を謳歌する一方で、宗教団体に属し労働の神聖を強調するため安息日を忠実に守り、性問題について話すことを忌み嫌う上品ぶった紳士がこの時代の理想的な生き方であった。 
    ヴィクトリア時代、文学界においては、19世紀最初の30年で詩が隆盛を極めた18世紀のロマンティシズムは衰退し、小説が活気を呈すようになる。その一般的特徴は、筋の複雑さ、登場人物の多さや階層的な広がり、都市生活の慌ただしさ、活気とその反面の富と貧困の鋭い対照など、当代における新社会の雰囲気を感じさせるものである。当時の小説家は読者と共有できる世界観を重視し、世相、市民の日常生活を如実に著した。この時代には一般人が小説を楽しむ為に必要な条件が整っており、小説は中産階級に広く普及していったのである。  ヴィクトリア時代を代表する小説家にディケンズ(Charles Dickens, 1812-70)が挙げられる。彼は幼少時代に靴墨工場で労働するという経験を持ち、作品では子供の苦しみや獄中生活、ひどい労

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      ヴィクトリア時代の小説について、当時の社会背   景なども考慮しながら述べよ。  ヴィクトリア時代はヴィクトリア女王が即位した1837年ごろから、南アフリカで1899年にボーア戦争が勃発するころまでを指す。社会の変化の観点から、初期(1837 -50)、中期(1850-70年代)、後期(1870年代-1901)の3期に分類されることが多い。ヴィクトリア時代の特色である中流階級の支配は、1832年の第一次選挙法改正によって下流階級の人々にも参政権が与えられたことによる。19世紀始めは新しい時代の幕開けであり、ヴィクトリア女王の即位から約60年間、イギリスは安定した秩序を保ちつつ目覚しく発展した。社会的には産業の発達と物の発達が大きく変化した時代であった。初期、石炭の発掘や蒸気機関の発明により、紡績業と製鉄業が盛んになる。いわゆる産業革命である。中期には自由貿易体制が整えられ、イギリス帝国は絶頂期を迎える。  しかし、この急速な発展は内的矛盾をはらんでいた。女王即位直後は「飢餓の40年代」と呼ばれ、食料不足が深刻な様相を呈していたし、これが労働階級の政治的発言力の強化を目的とする人民憲...

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