日本型雇用システムにおける労使関係の特徴は企業別組合である。日本で労働組合と呼ばれている組織が、ホワイトカラー労働者とブルーカラー労働者を包含したすべての従業員を代表する組織としての性格を強く持っている点である。そういった組織は、ヨーロッパ諸国では、産業レベルで組織される労働組合とは別個に、法定の従業員代表機関として設立されている。つまり、労使協議を行う組織としての従業員代表機関と、団体交渉や労働争議を行う組織としての労働組合が、企業レベルで一体となっているのが日本の特徴である。
現在では、多くの労働組合は従業員代表機関として労使協議を行うことが主たる機能となっている。特に、技術革新によって大幅な職務の転換が迫られたり、経営状況の悪化によって企業リストラを行わなければならないとき、労働組合は経営側から情報を入手し、組合員の間で討議を行った上で意見を集約して経営側に伝えるといった活動を行う。通常、その目的は労働者のメンバーシップをできるだけ維持することにおかれ、そのために賃金等の労働条件面で妥協を図るといった形になる。この機能が十全に発揮されたのが、石油ショック後の不況期だった。 ...