民法判例―利息制限法と利息債権②
論点「債務者が利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支
払った場合における超過部分の元本充当による元本完済後の支払額
の返還請求は可能か?」
①最高裁判所昭和43年11月13日 大法廷判決
<判決要旨>上告棄却
「利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支払った債務者は、制
限超過部分の充当により計算上元本が完済になったときは、その後に債務の存在
しないことを知らないで支払った金銭の返還を請求することができる」
*参照条文
利息制限法1条・4条
民法705条「債務ノ弁済トシテ給付ヲ為シタル債務者カ其当時債務ノ存在セ
サルコトヲ知リタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求ス
ルコトヲ得ス」
<事実の概要>
昭和31年5月1日、Xは自己所有の建物を物上担保として、Yから50万円を
弁済期同年6月1日、利息月7%という条件で金銭消費貸借契約を締結した。同
年5月4日、YはXに1か月分の利息を差し引いた46.5万円を交付し、Xは
自己の所有建物について、Yを権利者とする抵当権設定登記・賃貸借権設定登記
及び停止条件付代物弁済を原因とする所有権移転請求権保全登記を行った。
その後、Xから弁済が無いために、YはXに対して、代物弁済予約完結の意思
表示および代物弁済を原因とする所有権移転登記を完了した。これに対して、X
は弁済期以降、昭和34年11月までに20回余りに分けて支払った損害金のう
ち、制限利息超過部分を元本に充当すると、昭和32年11月までに完済したこ
とになるので、その後の支払部分は不当利得に当たるとして①28万3701円
の不当利得返還請求、②借り受け金債務の不存在確認、③各登記の抹消請求を求
めて提訴した。
<1審判決>
制限超過分の元本充当認めず、Yの代物弁済予約完結の意思表示及び、代物弁
済を原因とする所有権移転登記は有効として、代物弁済予約完結後に支払われた
10万円のみ不当利得を認め返還を命じた。
これを不服として、Xが控訴。
<原審判決>
天引利息を「元本充当→遅延損害金に充当→残存元本に充当」の順で計算した
場合には、昭和32年12月11日の支払いにより、Xの債務は完済したことに
なる。その後の支払で、Xは合計20万1217円の過払いが生じている。
事実認定として、Xはこの過払い分についての弁済当時、債務不存在を知らな
かったと認定して、不当利得返還請求を認容した。さらに、各登記の抹消を命じ、
Yの建物明渡請求を棄却した。
これを不服として、Yが上告。
<最高裁判旨>上告棄却
「元本債権の存在しない所に利息・損害金の発生の余地がなく、したがって、
利息・損害金の超過払いということもあり得ない。消費貸借上の元本債権が既に
弁済によって消滅した場合には、利息・損害金の発生はあり得ない。債務者が利
息制限法所定の制限を超えて任意に利息・損害金の支払を継続し、その制限超過
部分を元本に充当すると、計算上元本が完済となったとき、その後に支払われた
金額は、債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに他ならないから、
この場合には、利息制限法1条・4条各2項の適用はなく、民法の規定により、
不当利得の返還を請求することができる。」
結論「債務者が利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支
払った場合における超過部分の元本充当による元本完済後の支払額
の返還請求は可能である。」
②最高裁判所昭和44年11月25日 第3小法廷判決
<判決要
民法判例―利息制限法と利息債権②
論点「債務者が利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支
払った場合における超過部分の元本充当による元本完済後の支払額
の返還請求は可能か?」
①最高裁判所昭和43年11月13日 大法廷判決
<判決要旨>上告棄却
「利息制限法所定の制限を超える利息・損害金を任意に支払った債務者は、制
限超過部分の充当により計算上元本が完済になったときは、その後に債務の存在
しないことを知らないで支払った金銭の返還を請求することができる」
*参照条文
利息制限法1条・4条
民法705条「債務ノ弁済トシテ給付ヲ為シタル債務者カ其当時債務ノ存在セ
サルコトヲ知リタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求ス
ルコトヲ得ス」
<事実の概要>
昭和31年5月1日、Xは自己所有の建物を物上担保として、Yから50万円を
弁済期同年6月1日、利息月7%という条件で金銭消費貸借契約を締結した。同
年5月4日、YはXに1か月分の利息を差し引いた46.5万円を交付し、Xは
自己の所有建物について、Yを権利者とする抵当権設定登記・賃貸借権設定登記
及び停止条件付代物弁済を...