労働者派遣法が制定される以前は、他人の求めに応じて労働者を他人の指揮命令下にお
き、労働を提供させ、その対価を得る行為は、すべて職業安定法4 4 条に定める労働者供
給事業に該当し、禁止されていた。しかしながら、労働者派遣法の施行により、自己の雇
用する労働者を、雇用関係を維持したままで他人の指揮命令下に他人との間で雇用契約を
結ぶことなく、他人のために労働に従事させることは、労働者派遣として適法となり、労
働者派遣事業の今日に至っている。労働者供給事業は、中間搾取や労働者に対する不当な
圧迫の温床となりやすいことから禁止されてた経緯もあり、比して、労働者派遣事業は先
に述べたように派遣元事業主が雇用契約に基づき賃金支払い義務等労働基準法上の義務を
負い、他方で、派遣先においても労働時間管理、労働安全衛生管理を行う義務を負うこと
から労働者の保護を図るよう工夫されていることが伺える。
さいごに、出向と労働者派遣の相違について述べる。この両者留意すべき相違点は、雇用
契約の関係が異なる点である。出向には、
■ 在籍型出向: 即ち、出向元との雇用契約を維持したまま、出向先に配属されるもの
■ 移籍型出向: 即ち、出向元との雇用契約は一旦解除し、出向先に配属されるもの
とがある。しかしながらいずれの場合についても、出向労働者は、出向先との間で雇用契
約を結んでいる。一方、労働者派遣については、既述のとおり、派遣元との雇用契約が成
り立っており、ゆえに、出向と労働者派遣では雇用契約の関係において相違があることが
言える。
■課題
労働者派遣とはどのような就労形態か。労働者供給とはどのように区別されるのか。
また、出向とはどのような点が異なるのかについて論ぜよ。
■回答
はじめに、労働者派遣の就労形態について述べる。労働者派遣では、派遣される労働者
(以下、派遣労働者)は、「派遣元事業主」から賃金支払を受け(雇用契約が成立している)、
その指示に従って、「派遣先」に派遣され、その指揮命令を受けて派遣先の事業に従事する
ことになる。派遣労働者は「派遣元事業主」との間でのみ雇用関係を結んでおり、派遣先
と雇用関係を結ぶことはないというのがポイントとなる。
※下図参照のこと。
つぎに、労働者派遣と労働者供給との区別について述べる。
労働者供給とは、いわゆる「人貸し」のことで、実際に働く職場の使用者ではない第三
者が中間に介在する間接雇用の一つの形態である。何人かの労働者を登録させたり、契約
などで自分の支配下においておき、労働力を必要とする事業主からの依頼を受けて労働者
を貸出すことを言う。
※下図参照のこと。(法施行前)
労働者派遣法が制定される以前は、他人の求めに応じて労働者を他人の指揮命...