環境犯罪学は犯罪の事後予防から事前予防を実現するために提唱されたものである。
環境犯罪学は、犯罪発生の時間と空間に関する理論であり、犯罪はどのような状況で発生するかを考える(状況的犯罪予防)。なお、ここでは公害などの環境犯罪を扱うものではない。また、犯罪原因としての「環境」を意味しない。ここで意味するのは、犯罪の発生を誘発するという意味での環境である。例えば、夜間の街灯が暗いなどの環境である。また、従来の犯罪学が「犯罪者」研究に着目していたのに対して、環境犯罪学は「出来事(event)」に着目する。
かかる環境犯罪学の実践的側面として3つのポイントを挙げることができる。1つめに、犯罪を行うものに対していっそうの犯行努力を求めることである。例えば、施錠を一箇所から二箇所にするなどである。2つめに、検挙のリスクを高める(捕まりやすくする)ことである。例えば、夜間の街灯を明るいものにするなどである。3つめに、犯罪利益を減少させることである。例えば、ひったくりが多発する場所においてお金を持ち歩かないようにするなどである。このように犯罪者に対してメッセージを伝えることで、犯罪者に物理的に犯行をさせないこと、犯罪者に犯行を諦めさせることが期待できる。
犯罪学 学年末課題レポート
「犯罪学における犯罪原因論の展開とその必要性」
1. 犯罪原因論の成立前について
2. 犯罪原因論の成立
3. 犯罪原因論の衰退とその後の変化
4. 新しい犯罪学(環境犯罪学)とその問題点
5. 現在の状況に見る犯罪原因論の必要性
1.犯罪原因論の成立前について
近世以前においては「鬼神論」、「魔人論」が唱えられ、霊を出すために鞭で打つなどの
過酷な刑罰が科せられたり、私的復讐や報復を回避するために、封建領主によって迷信が
利用されたりしていた。この点において、近世以前は犯罪原因・犯罪予防について無関心
であったということができる。
2.犯罪原因論の成立
19世紀中頃になると、イタリア・フランスなどのヨーロッパ諸国において、犯罪原因
論を中心とする犯罪学が発達した。つまり、犯罪はなぜ起きるのか、その原因は何なのか
が問われたのである。そこで、人間の生物的心理的原因、あるいは社会的原因など様々な
原因が指摘された。
例えば、ロンブローゾによる生来的犯罪説がある。ダーウィンの進化論の影響を受けた
ロンブローゾは、殺人犯と一般兵士との比較にお...