環境法レポート
論題:「廃棄物問題とリサイクル」
第1 はじめに(廃棄物問題の現状)
1 高度経済成長期を経て、現代社会は、排出される廃棄物のことを考えずに商品を大量に
生産し、販売し、消費し、廃棄するといういわゆる大量生産社会となった。このような社
会システム全体が廃棄物問題を発生させたといえる。
環境白書(平成 18 年度版)によれば、廃棄物の排出量は、高度経済成長と共に急増し、
1990 年(平成 2 年)以降は、減量化対策やバブル経済の崩壊によって横ばい傾向となって
いるものの、2003 年(平成 15 年)の一般廃棄物の総排出量は 5161 万トンであり、国民1
人1日当たり約 1 キログラムの廃棄物を排出していることになる。一方、同年度の産業廃
棄物の総排出量は約 4 億 1200 万トンであり、一般廃棄物の約 8 倍にあたる。
2 このような廃棄物排出量の増加は、処理経費の増加、処理能力の限界、不法投棄の問題、
広域処理の問題(農村部の市民が都市部の市民が出した廃棄物を押しつけられる)、資源の
枯渇化、自然環境への悪影響など、様々な問題を引き起こす。そこで、法政策的観点から
は、法律によって廃棄物排出量を減らす努力をすることが不可欠となる。そのためには、
廃棄物を適切に処理するための法制度と、廃棄物そのものを発生させないようにするため
の法制度という 2 つの観点が重要となる。そこで、以下、それぞれの法制度についてその
趣旨・仕組み、問題点等について検討する。
第2 廃棄物を適切に処理するための法制度
1 廃棄物処理法
⑴概要
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は、1970(昭和 45)年のいわゆる公
害国会で制定された法律であり、廃棄物についての処理の仕組みが規定されている。廃棄
物処理法の前身として清掃法があるが、この法律は「生活環境の保全及び公衆衛生の向上
を図ること」(清掃法 1 条)だけを目的としたものであった。これに対して、廃棄物処理法
では「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」(廃棄物処理法 1 条)
と規定されており、ここでは「生活環境の保全」が主たる目的となっている。さらに、近
年においては廃棄物の処理よりも、廃棄物の排出を抑制することが重要であると考えられ
るようになり、かかる視点は 1991(平成 3)年の改正時に 1 条に追加された。
⑵廃棄物の概念
「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、
動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及び
これによって汚染された物を除く)をいう(廃棄物処理法 2 条 1 項)。
廃棄物は、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」とに大別される。「産業廃棄物」とは、
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃
プラスチック類などのことをいい(2 条 4 項、廃棄物処理法施行令 2 条)、 「一般廃棄
1
物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう(廃棄物処理法 2 条 2 項)。
なお、1991(平成 3)年の廃棄物処理法改正によって、産業廃棄物、一般廃棄物のうち、
爆発性、毒性、感染性のある廃棄物がそれぞれ「特別管理産業廃棄物」、「特別管理一般
廃棄物」とされ、これらの廃棄物の処理に関しては通常の廃棄物よりも厳しい規制が加
えられている(2 条 3 項、5 項)。
⑶ 一般廃棄物の処理とそれに関する規制
①処理責任
一般廃
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論題:「廃棄物問題とリサイクル」
第1 はじめに(廃棄物問題の現状)
1 高度経済成長期を経て、現代社会は、排出される廃棄物のことを考えずに商品を大量に生産し、販売し、消費し、廃棄するといういわゆる大量生産社会となった。このような社会システム全体が廃棄物問題を発生させたといえる。
環境白書(平成 18 年度版)によれば、廃棄物の排出量は、高度経済成長と共に急増し、1990 年(平成 2 年)以降は、減量化対策やバブル経済の崩壊によって横ばい傾向となっているものの、2003 年(平成 15 年)の一般廃棄物の総排出量は 5161 万トンであり、国民1人1日当たり約 1 キログラムの廃棄物を排出していることになる。一方、同年度の産業廃棄物の総排出量は約 4 億 1200 万トンであり、一般廃棄物の約 8 倍にあたる。
2 このような廃棄物排出量の増加は、処理経費の増加、処理能力の限界、不法投棄の問題、広域処理の問題(農村部の市民が都市部の市民が出した廃棄物を押しつけられる)、資源の枯渇化、自然環境への悪影響など、様々な問題を引き起こす。そこで、法政策的観点からは...