処分的法律ないし措置法の問題
一 意義・特徴
1 処分的法律とは、形式的には一般 的・抽象的な法規範であるが、実質的には個別的・
具体的事件を解決するために制定された法規範のことをいう。日本では、戦後、行政国
家現象に対する民主的統制の観点から、個別具体的な事件について法律が制定されてい
る。「緊急措置法」、「特別措置法」、「臨時措置法」、「応急措置法」、「措置法」等と銘打
った法律が多いが、必ずしもそれに限られない。最近の例としては、イラクにおける人
道・復興支援活動及び安全確保支援活動を目的としてイラクに自衛隊を派遣するために
制定されたイラク特別措置法がある。
2 処分的法律は、当該法律が目指す当面の具体的課題や目的が消えてなくなった場合、
もしくは当該法律の提供する手段が、その目的を達成する上で、不適切なものである
ことが明らかになった場合には、法律としての意味・役割を喪失するという点に特徴
がある。例えば、当該法律に定める目的を既に実現してしまった場合や時の経過によ
って目的とする対処措置が不要になった場合、当該法律に定める手段をもってしては、
目的を達成できないことが判明した場合には、もはや法律としての機能を果たさない
ことになるのである。
二 憲法上の論点
1 憲法 41 条における「立法」とは、実質的意味の立法、すなわち法律が不特定多数の
人に対して(一般性)、不特定多数の場合ないし事件(抽象性)に適用されることを意味
するというのが通説的立場である。そこで、処分的法律は、法律の受範者もしくは事
件が少なからず特定されているため、法律の一般性・抽象性に反しないか、処分的法
律が憲法の予定する「法律」といえるのかが問題となる。
2 この問題については、大きく分けて⑴原則違憲とする見解、⑵原則と合憲する見解
とに分かれる。⑵については、さらに①形式的法律(法律事項)説と②法律の一般性
(平等保障)説とに分かれる。
⑴ 原則違憲とする見解は、憲法は、地方公共団体の場合とは異なり、個人や結社に
対する個別的法律は原則として許さない趣旨であると主張する。その理由として、
立法の一般的性格は、人間を予見可能な規範のもとに、かつ平等の配慮と尊重をも
って扱うという法の支配の要請にかかわっていること、95 条は「地方公共団体の住
民の投票においてその過半数の同意」を要求している点に着目すれば、これは地方
自治を守る趣旨から特に住民投票を要求して個別的法律に対して著しく防御的姿勢
を示すものであるといえることを挙げる。
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⑵ ①原則合憲とする見解のうち、形式的法律説は、処分的法律は、本来的には行政
行為であるが、その重要性を考慮して、政府の決定からはずされ、国会の「法律」
事項とされたものであると主張する。その上で、裁判的性格を有する個別・具体的
な法律は司法権の独立に反するため違憲となるが、行政的性格を有する個別・具体
的な法律は、社会の発展とともにその必要を増し、合憲であると結論づける。その
理由として、個別的・具体的法律を国会が定めうるかという問題は、法律で 41 条に
いう法以外の内容を有するものをどこまで定めうるかという問題と捉えるべきであ
ることを挙げる。
②原則合憲とする見解のうち、法律の一般性説は、権力分立原理の核心を侵し、
議会・政府の憲法上の関係を決定的に破壊するものでなく、かつ、国民の平等を侵
害しない場合であれば、国会は処分的法律を制定できると主張する。その理由とし
て、まず、権力分立原理との関係において
処分的法律ないし措置法の問題
一 意義・特徴
1 処分的法律とは、形式的には一般 的・抽象的な法規範であるが、実質的には個別的・具体的事件を解決するために制定された法規範のことをいう。日本では、戦後、行政国家現象に対する民主的統制の観点から、個別具体的な事件について法律が制定されている。「緊急措置法」、「特別措置法」、「臨時措置法」、「応急措置法」、「措置法」等と銘打った法律が多いが、必ずしもそれに限られない。最近の例としては、イラクにおける人道・復興支援活動及び安全確保支援活動を目的としてイラクに自衛隊を派遣するために制定されたイラク特別措置法がある。
2 処分的法律は、当該法律が目指す当面の具体的課題や目的が消えてなくなった場合、もしくは当該法律の提供する手段が、その目的を達成する上で、不適切なものであることが明らかになった場合には、法律としての意味・役割を喪失するという点に特徴がある。例えば、当該法律に定める目的を既に実現してしまった場合や時の経過によって目的とする対処措置が不要になった場合、当該法律に定める手段をもってしては、目的を達成できないことが判明した場合には、もは...