論題 日本における行政評価制度について、その特色や内容について述べた上で、問題点
について考察せよ。さらに、解決策を示せば加点とする。
⑴ 日本の行政評価制度は、地方公共団体から中央政府へという方向で波及した。具体的
には、1996 年に三重県庁が行政改革に向けた職員の意識向上を目的として、「事務事業評
価システム」を導入したことがその始まりとされており、次いで、1997 年に北海道庁が
時代の変化を踏まえた施策の役割や効果の再評価を目的とするいわゆる「時のアセスメ
ント」を導入したことから、行政評価制度が全国へと波及したのである。
⑵ 日本における行政評価制度には、一般的に「政策」、「施策」、「事務事業」からなる政
策体系に従って、「政策評価」、「施策評価」、「事務事業評価」の3つの評価段階が存在す
る。しかし、行政運営に関するPDCAサイクルが構築されていない現状においては、
行政評価制度は単独で運用されているので、地方公共団体における行政評価制度は大き
く分けて、「政策評価型」と「事務事業評価型」に分類することが可能である。具体的に
は、前者は地方公共団体の政策内容やその水準を評価するものであり、後者は具体的な
個々の事業の評価を行うものである。例えば、三重県は事務事業評価を起点とし、現在
は政策評価も実施しているので、「政策評価型」として分類が可能であるが、個別事業の
成果指標設定による達成度を基準とする事務事業評価も実施していることから、政策評
価と事務事業評価の複合型として捉えることも可能である。また、静岡県で実施されて
いる「業務棚卸方式」は、特定の行政分野ごとの目標達成度をメルクマールとして、施
策グループの目標達成状況を査定していく「政策評価型」に該当する。さらに、北海道
で導入されている「時のアセスメント」は、主に公共事業等の事業評価を行うという側
面を捉えれば、「事務事業評価型」に分類することができる。
⑶ア 総務省自治行政局報告資料によると平成 18 年 1 月 1 日時点における地方公共団体の
行政評価の導入済の状況は、都道府県においては、47 団体中 46 団体、政令指定都市に
おいては 14 団体中すべての団体、中核市においては 37 団体中 32 団体、特例市におい
ては 39 団体中 35 団体にのぼり、特例市以上の地方公共団体においては約 90%が、既に
行政評価を実施していることが報告されている(総務省、2006 年)。また、一般の市町
村における行政評価の導入状況に関しては、導入済の自治体こそ約30%(1985団体中472
団体)にとどまるものの、試行中あるいは導入検討中を含めると約86%(1985団体中1723
団体)の団体において、今後行政評価が実施されることが示されている。
かかる結果は、日本においても行政評価が浸透し始めたことを示すように思われる。
しかし、実際は、ほとんどが事務事業評価の状況を示しているに過ぎない。導入済み
と回答した都道府県において、事務事業評価は 100%であるのに対して、政策・施策評
価は、それぞれ 37%、87%である。一般の市区においては、事務事業評価 97%に対して、
それぞれ 16%、35%、町村に至っては事務事業評価 98%に対して、それぞれ 7.5%、20.5%
程度である。また、政策・施策評価結果を重点施策や方針の策定に活用している割合
は、最も高い都道府県においても 30%程度にとどまっている。さらに、事務事業におい
ては評価導入の成果を実感できると回
論題 日本における行政評価制度について、その特色や内容について述べた上で、問題点
について考察せよ。さらに、解決策を示せば加点とする。
⑴ 日本の行政評価制度は、地方公共団体から中央政府へという方向で波及した。具体的
には、1996 年に三重県庁が行政改革に向けた職員の意識向上を目的として、「事務事業評
価システム」を導入したことがその始まりとされており、次いで、1997 年に北海道庁が
時代の変化を踏まえた施策の役割や効果の再評価を目的とするいわゆる「時のアセスメ
ント」を導入したことから、行政評価制度が全国へと波及したのである。
⑵ 日本における行政評価制度には、一般的に「政策」、「施策」、「事務事業」からなる政
策体系に従って、「政策評価」、「施策評価」、「事務事業評価」の3つの評価段階が存在す
る。しかし、行政運営に関するPDCAサイクルが構築されていない現状においては、
行政評価制度は単独で運用されているので、地方公共団体における行政評価制度は大き
く分けて、「政策評価型」と「事務事業評価型」に分類することが可能である。具体的に
は、前者は地方公共団体の政策内容やその水準...