1.はじめに
敗戦と占領・講和を経て国際社会に復帰する過程で、吉田茂が基地の提供を通じてアメリカに安全保障の大部分を依頼しつつ、自衛のための軍備を徐々に整備する方針を決定したことは、戦後日本を方向づける上で重要な意味を持っている。そのため吉田の外交・安全保障政策が、戦後史研究において中心的な検討課題となってきた。
「吉田茂」研究論文の比較
目次
1.はじめに
2.北岡伸一 「吉田茂における戦前と戦後」の要旨
3.楠綾子 「吉田茂の安全保障政策」の要旨
4.研究史における位置づけ
5.おわりに
1.はじめに
敗戦と占領・講和を経て国際社会に復帰する過程で、吉田茂が基地の提供を通じてアメリカに安全保障の大部分を依頼しつつ、自衛のための軍備を徐々に整備する方針を決定したことは、戦後日本を方向づける上で重要な意味を持っている。そのため吉田の外交・安全保障政策が、戦後史研究において中心的な検討課題となってきた。
本稿では、北岡伸一氏の「吉田茂における戦前と戦後」と、楠綾子氏の「吉田茂の安全保障政策―日米の戦後構想・安全保障構想の相互作用のなかで―」という2本の吉田茂に関する研究論文を読み、要約・比較することで、①2本の論文の分析視点の違いと、②研究史における位置づけ、についてまとめていきたい。
2.北岡伸一 「吉田茂における戦前と戦後」の要旨
本論文は新たに公開された『吉田茂書簡』を使いながら、吉田茂の戦前と戦後の連続性に注目しつつ、吉田外交の特徴を明らかにし、時代適合性について考察している。
吉田...