避暑地の猫

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    霧の病悪人

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    避暑地の猫

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    1、 はじめに
    この『避暑地の猫』は宮本輝の作品の中でも異色で、悪人しか出てこない小説を書こうとしたらしい。それゆえに悪そのものを書き上げた作品となっている。
    そしてこの本の題名の中にも入っている『猫』であるが、一見何の関係も無さそうに見えて実はとても深いところに関係を見せている。この猫こそが悪の象徴であり、修平や姉自身のことを猫とダブらせて考えている。
    そこでこのなかで起こる霧の病気、猫、そして悪との関連についてこれから考察していこうと思う。

     はじめて霧の病にかかったのは修平が秘密の地下室を見つけた後だ。その夜に修平は初めて姉の乳を触る。このときになって自覚できるほど性に目覚めこの病に飲み込まれることになる。修平は大きくなればなるほどこの霧の病は重くなっている。しかしこの霧に犯されていたのは修平だけでなく、姉や母父、金次郎や美貴子、恭子に志津までもがこの霧の毒に飲みこかれていたように思う。本編で姉が「みんな、おかしいよ。父ちゃんも母ちゃんも・・・・、姉ちゃんも」と言っていることからもそれが窺える。
     この霧はただの霧ではなく、この中には隠れているのは、あまりにもドロドロした人間...

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