ローレンツ変換の求め方
難しい求め方と簡単な求め方があるけど、どっちがいい?
色んな方法がある
ローレンツ変換を求めるには大きく分けて二通りの方法がある。 ローレンツ流の「マクスウェル方程式を不変に保つ変換」を導く方法と、アインシュタイン流の「光速度が慣性系によらず一定」であることから導く簡単な方法である。
ベクトルを使ったり演算子を使ったり、行列を使ったりといった教科書による独自性はあるものの、大抵の教科書に載っているのはアインシュタイン流の方法である。 中には電磁場の波動方程式を不変に保つような、どっちつかずの方法もたまに見かける。 今さらわざわざ難しい方法を紹介する必要もない気がするが、2つの求め方に大きな思想的違いがあることを分かってもらいたいので両方とも紹介するつもりでいる。 しかし1ページの分量が増えて読みにくくなるであろうし、マクスウェルの方程式についてはこの特殊相対論の解説の後の方でいろいろいじりまわそうと考えているのでここではアインシュタイン流の方法だけを紹介しておくことにしよう。
私の今までの経験の中で一番分かりやすい簡単な方法を紹介することにする。 計算が楽で見た目簡単なものより、計算が面倒でも直観的に理解しやすい方がいいと思い、この方法を選んだ。
アインシュタイン流の簡単な方法
静止系 K ( x, y, z, t ) とそれに対してx軸方向へ速度 v で運動している系 K’( x', y', z', t' ) の間の関係式を求めるのが目的である。 t = 0 の瞬間、両者の原点は一致していたとする。 この同じ t = 0 の瞬間、K 系の原点から光が放たれたとするとこの光は全方向に飛び去って、 t 秒後には原点から半径 ct だけ離れた球面上の点に分布するはずである。 これを式で表せば、
(1)
となる。 高校で習う球面の方程式である。
一方、K' 系の原点にいる観測者も光が自分を中心に同心円状に広がるように見えるというのが相対性理論の要求する基本原理である。 この状況は同じように、
(2)
と書ける。
さて、K系からK'系への変換を求めるというのは、
と書いた時の各係数 a ~ q を決める作業に他ならない。 (アルファベットの c は光速度に使っているので使用を避けた。)
これらの式を (2) に代入してやった時に (1) の条件が満たされている必要があるので・・・つまり (1) と同じ形にならなければいけないので・・・、このことをヒントに各係数を決めてやればよい。
ところで、この変換式がなぜ x, y, z, t についての1次式になっていて、 x2 とか x3 などに比例する項がないか分かるだろうか? これは簡単なことなのではあるがどの教科書にも「当然」と書いてあるだけで、分からない人には分からないと思うのである。 もし変換式の中に x の2乗の項があったとしたら、これを (2) に代入した時に、 x の4乗の項が出来てしまうだろう。 しかし (1) 式を満たすためには x の4乗の項の係数は0でなければならないはずだ。 というわけで2次以上の項は初めから省いてある。
さて、これからこの16個の係数の全てを決めてやる作業をするわけだが、とてもじゃないが面倒くさい。 本格的な計算に入る前にいくらか簡単にならないだろうか? 考えてみよう。
係数をなるべく省くために考えろ!
まず、一番初めの式だが、K' 系は x 方向へ速度 v で移動しているので、 t
ローレンツ変換の求め方
難しい求め方と簡単な求め方があるけど、どっちがいい?
色んな方法がある
ローレンツ変換を求めるには大きく分けて二通りの方法がある。 ローレンツ流の「マクスウェル方程式を不変に保つ変換」を導く方法と、アインシュタイン流の「光速度が慣性系によらず一定」であることから導く簡単な方法である。
ベクトルを使ったり演算子を使ったり、行列を使ったりといった教科書による独自性はあるものの、大抵の教科書に載っているのはアインシュタイン流の方法である。 中には電磁場の波動方程式を不変に保つような、どっちつかずの方法もたまに見かける。 今さらわざわざ難しい方法を紹介する必要もない気がするが、2つの求め方に大きな思想的違いがあることを分かってもらいたいので両方とも紹介するつもりでいる。 しかし1ページの分量が増えて読みにくくなるであろうし、マクスウェルの方程式についてはこの特殊相対論の解説の後の方でいろいろいじりまわそうと考えているのでここではアインシュタイン流の方法だけを紹介しておくことにしよう。
私の今までの経験の中で一番分かりやすい簡単な方法を紹介することにする。 計算が楽で見た目簡単なものより、計算が面倒でも直観的に理解しやすい方がいいと思い、この方法を選んだ。
アインシュタイン流の簡単な方法
静止系 K ( x, y, z, t ) とそれに対してx軸方向へ速度 v で運動している系 K’( x', y', z', t' ) の間の関係式を求めるのが目的である。 t = 0 の瞬間、両者の原点は一致していたとする。 この同じ t = 0 の瞬間、K 系の原点から光が放たれたとするとこの光は全方向に飛び去って、 t 秒後には原点から半径 ct だけ離れた球面上の点に分布するはずである。 これを式で表せば、
(1)
となる。 高校で習う球面の方程式である。
一方、K' 系の原点にいる観測者も光が自分を中心に同心円状に広がるように見えるというのが相対性理論の要求する基本原理である。 この状況は同じように、
(2)
と書ける。
さて、K系からK'系への変換を求めるというのは、
と書いた時の各係数 a ~ q を決める作業に他ならない。 (アルファベットの c は光速度に使っているので使用を避けた。)
これらの式を (2) に代入してやった時に (1) の条件が満たされている必要があるので・・・つまり (1) と同じ形にならなければいけないので・・・、このことをヒントに各係数を決めてやればよい。
ところで、この変換式がなぜ x, y, z, t についての1次式になっていて、 x2 とか x3 などに比例する項がないか分かるだろうか? これは簡単なことなのではあるがどの教科書にも「当然」と書いてあるだけで、分からない人には分からないと思うのである。 もし変換式の中に x の2乗の項があったとしたら、これを (2) に代入した時に、 x の4乗の項が出来てしまうだろう。 しかし (1) 式を満たすためには x の4乗の項の係数は0でなければならないはずだ。 というわけで2次以上の項は初めから省いてある。
さて、これからこの16個の係数の全てを決めてやる作業をするわけだが、とてもじゃないが面倒くさい。 本格的な計算に入る前にいくらか簡単にならないだろうか? 考えてみよう。
係数をなるべく省くために考えろ!
まず、一番初めの式だが、K' 系は x 方向へ速度 v で移動しているので、 t 秒後の K' 系の原点である x' = 0 の地点はK系では x = v t である。 よって、x' = a ( x - vt ) という形でなければならない。 t = 0, x = 0 の時に x' = 0 であることを考えると y や z の項も邪魔である。
次の2つの式は、劇的に簡単になる。 もし t に比例する項があれば、K' 系は x 方向だけでなく、y 方向、z 方向にも動いていることになってしまい、仮定に反する。 よって、とりあえず、 y' = fx + gy + hz という形になるが、これだと y 軸が相対速度に応じて傾いてしまうことになる。 空間はどの方向でも同じ性質を持つと考えられるので、どちらかに傾く理由は見出せない。 よって、 y' = gy という形でなければならない。 また、y 軸方向だろうと z 軸方向だろうと同じ性質を持つことから z 軸についても係数は同じであり、z' = gz と書けるであろう。 これは x 方向に進んだ時に y 方向や z 方向に縮む(あるいは伸びる)可能性があるということである。 当然考えられることだ。 ところが少し考えればこの係数 g は1でなければならないことが分かる。 今は K 系から K' 系への変換式を求める作業をしているが、当然のことながら、K' 系から K 系を見たときにも同様の変換式が成り立つはずである。 違うのは速度 v が逆方向であるということくらいである。 しかしお互いは全く対等であるので速度が逆だというくらいで係数が変わってはいけない。 x 軸のプラス方向とマイナス方向に空間的にどんな違いがあるというのか。 これは便宜上決めた方向に過ぎないのだ。 こういうわけで、K 系から K' 系に変換をして、さらに K' 系から K 系に変換した時、ちゃんと元に戻らなくてはならないことから、g2 = 1 であるはずである。 g = -1 とすると初めから上下左右がひっくり返ってしまっているので g = 1 を取るべきである。
これで文句なしに y' = y , z' = z ということで決まりである。 よく簡単な教科書に見られる「今我々はx方向についてだけを考えているので・・」などという説明は当然行うべき思考の過程をごまかしすぎである。 こういう不親切さやいい加減な説明が「物理学者はあまり考えてないんじゃないか」といったようなトンデモ的思考を生み出すのだ! そういった学者への不信感に対しては、これはとことんまで考え抜いて抜け道のない議論の結果なのだということを叩きつけなくてはならない。 ・・・ちょっと熱くなってしまったな。
では、残る最後の式についてであるが、これには前もって省略できる項はない。 しかしこの後の計算で係数比較をするときのことを考えれば、係数 o, p は結局0になることが分かる。 ここでは計算をなるべく簡単にするためにあらかじめこれを省略しておくことにする。 信じられない人はこの式の全ての項を残したまま計算してみるとよい。 複雑な計算に入る前にこの意味が分かるだろう。
以上の結果を分かりやすく書き直そう。 ついでに係数のアルファベットも付け直すことにする。
(3)
係数は3つだけになり非常に簡単になった。
あとは計算!
あとは係数 A, B, D を決定すればいいだけである。 こいつらを(2)式に放り込めば、
となり、この最後の式が(1)と同じになるための条件として、
という3つの式を得る。 後はこれを連立方程式として解いてやればいいだけだ。 ここでわざわざ解いてみせる必要はないであろう。
とは言っても2乗が出てきてちょっと解きにくいのは確かだ。 次のことだけ注意しておこう。 各係数はプラスとマイナスの2つの解が出てくることになるが、v → 0 の極限でK系とK'系が一致するために係数AとDはプラスの方を選ぶ必要がある。 そうしなければx軸や時間軸が初めから逆を向いてしまうことになってしまう。 その結果としてBはマイナスを取らなければならなくなるだろう。
となれば正解だ。 つまりローレンツ変換は次のようになる。
おさらい
いろいろ書いて長くなってしまったが、やっていることは単純だ。 (3)式を(2)式に入れて(1)式になるように係数を決めただけである。
資料提供先→ http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/lorentz.html