新エネルギーの展望:地球温暖化

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    www.iae.or.jp

    ま え が き
    21世紀に入り,かねて懸念されていた世界的規模の諸問題が表面化してきている感が
    ある。その最たるものが,2001年9月11日米国で発生した同時多発テロ事件とそれに呼応
    したように世界的に横行しているテロと地域的紛争の発生・激化である。これは,長い民
    族の歴史,宗教,体制,資源の有無等の相違などを背景とした人間同士の相互理解の欠如
    によるものであり,従って正しく人為的問題そのものといえよう。しかしこの問題は,人
    為的起源によるものであればこそ,関係する民族,国家,人間のあいだで理解が得られた
    ら一挙に解決する可能性をもったものであろう。
    さらに,もう一つの大きな問題として地球温暖化問題が挙げられる。これは,テロや
    紛争とは異なりそれほど直接的で凶暴性はないにせよ,昨今の状況を見る限り段々とその
    影響が顕在化してきていると思われる。その主原因がエネルギーとしての化石燃料の使い
    方によるものであるためにこれも正しく人為的問題である。しかし,同じ人為的ながら,
    化石燃料は現代文明には不可欠であり今後途上国を中心とした経済発展と人口増加が予想
    される中,当面増加はあっても減少は考え難いこと,二酸化炭素は硫黄酸化物等の従来の
    環境問題と比べその発生量がけた違いに大きいこともあり安価な対策・処理技術の見通し
    が立っていないこと,そして更に最も重要なこととして各国の理解と取組みにおいて未だ
    一致が得られていないこと等から,問題解決の困難さ・長期化が予想される。
    しかし,地球温暖化問題はその様な問題を抱えているとはいえ,その取組みが遅れれ
    ば遅れるほど問題は更に大きく,またその影響・被害も大きくなる可能性が指摘されてい
    る。そこで,本問題解決には極力多くの人が,正しい状況把握をなし,理解を深めること
    が先ず重要であると考えられる。
    当研究所として,先に「地球温暖化問題」のテーマを,1988年度,1990年度,および
    1992年度に集中的に取り上げ解説したが,本年はそれ以降の同問題の進展,最近の成果等
    最新状況をとりまとめ関係者あるいは一般の方々の御参考に供せんとするものである。
    なお,本編作成にあたっては,エネルギー技術情報センター(センター長 小川紀一郎)
    において作成・編集した。
    終わりに,このシリーズの刊行は,(財)電力中央研究所からの委託業務「エネルギー
    技術情報に関する調査」の一環をなすものであり,同研究所に対して深く謝意を表する。
    2004年3月
    財団法人 エネルギー総合工学研究所
    理 事 長 秋 山 守
    新 エ ネ ル ギ ー の 展 望
    地 球 温 暖 化
    目 次
    はじめに ................................................................ 1
    1 地球温暖化問題とは ..................................................... 2
    1.1 地球の生成と大気温度について ....................................... 2
    1.2 地球温暖化問題の概要 ............................................... 4
    2 異常気象について ...................................................... 7
    2.1 異常気象について ..........................

    資料の原本内容

    ま え が き
    21世紀に入り,かねて懸念されていた世界的規模の諸問題が表面化してきている感が
    ある。その最たるものが,2001年9月11日米国で発生した同時多発テロ事件とそれに呼応
    したように世界的に横行しているテロと地域的紛争の発生・激化である。これは,長い民
    族の歴史,宗教,体制,資源の有無等の相違などを背景とした人間同士の相互理解の欠如
    によるものであり,従って正しく人為的問題そのものといえよう。しかしこの問題は,人
    為的起源によるものであればこそ,関係する民族,国家,人間のあいだで理解が得られた
    ら一挙に解決する可能性をもったものであろう。
    さらに,もう一つの大きな問題として地球温暖化問題が挙げられる。これは,テロや
    紛争とは異なりそれほど直接的で凶暴性はないにせよ,昨今の状況を見る限り段々とその
    影響が顕在化してきていると思われる。その主原因がエネルギーとしての化石燃料の使い
    方によるものであるためにこれも正しく人為的問題である。しかし,同じ人為的ながら,
    化石燃料は現代文明には不可欠であり今後途上国を中心とした経済発展と人口増加が予想
    される中,当面増加はあっても減少は考え難いこと,二酸化炭素は硫黄酸化物等の従来の
    環境問題と比べその発生量がけた違いに大きいこともあり安価な対策・処理技術の見通し
    が立っていないこと,そして更に最も重要なこととして各国の理解と取組みにおいて未だ
    一致が得られていないこと等から,問題解決の困難さ・長期化が予想される。
    しかし,地球温暖化問題はその様な問題を抱えているとはいえ,その取組みが遅れれ
    ば遅れるほど問題は更に大きく,またその影響・被害も大きくなる可能性が指摘されてい
    る。そこで,本問題解決には極力多くの人が,正しい状況把握をなし,理解を深めること
    が先ず重要であると考えられる。
    当研究所として,先に「地球温暖化問題」のテーマを,1988年度,1990年度,および
    1992年度に集中的に取り上げ解説したが,本年はそれ以降の同問題の進展,最近の成果等
    最新状況をとりまとめ関係者あるいは一般の方々の御参考に供せんとするものである。
    なお,本編作成にあたっては,エネルギー技術情報センター(センター長 小川紀一郎)
    において作成・編集した。
    終わりに,このシリーズの刊行は,(財)電力中央研究所からの委託業務「エネルギー
    技術情報に関する調査」の一環をなすものであり,同研究所に対して深く謝意を表する。
    2004年3月
    財団法人 エネルギー総合工学研究所
    理 事 長 秋 山 守
    新 エ ネ ル ギ ー の 展 望
    地 球 温 暖 化
    目 次
    はじめに ................................................................ 1
    1 地球温暖化問題とは ..................................................... 2
    1.1 地球の生成と大気温度について ....................................... 2
    1.2 地球温暖化問題の概要 ............................................... 4
    2 異常気象について ...................................................... 7
    2.1 異常気象について ................................................... 7
    2.2 世界の異常気象 ..................................................... 7
    2.3 日本の異常気象 ..................................................... 9
    3 温暖化問題と従来の取組み ............................................... 10
    3.1 従来の取り組み概要 ................................................. 10
    3.2 最近の科学技術的知見の総括 ......................................... 11
    3.3 過去から現在迄の科学技術による解明事項 ............................. 12
    3.3.1 過去から現在までの記録と傾向 ................................... 12
    3.3.2 気温の変化と二酸化炭素の関係 ................................... 13
    3.3.3 炭素循環について ............................................... 15
    3.4 温暖化の将来予測 ................................................... 16
    4 地球温暖化と将来の影響 ................................................. 19
    4.1 概要 ........................................................ ...... 19
    4.2 温暖化と予想される問題 ............................................. 19
    4.3 温暖化の影響の顕在化 ............................................... 21
    5 温暖化の安定化と防止のために ........................................... 26
    5.1 影響閾値と安定化濃度 ............................................... 26
    5.2 温暖化防止策(緩和策) ............................................. 29
    6 気候変動枠組み条約 ..................................................... 32
    6.1 京都議定書 ........................................................ 32
    6.2 COP3以降の主要議論................................................ 34
    7 日本の取組み .......................................................... 34
    7.1 概要 ........................................................ ...... 34
    7.2 主要な取組みの概要 ................................................. 34
    7.3 京都メカニズムへの対応 ............................................. 35
    7.4 日本の温室効果ガス排出状況 ......................................... 35
    7.5 エネルギーとの関係 ................................................. 36
    あとがき ................................................................ 38
    - 1 -
    は じ め に
    当所が先に「新エネルギー展望」シリーズに
    おいて地球温暖化関連テーマを取り上げてから
    既に10年余が経過した
    (1)(2)(3)。丁度その頃は,
    「環境と開発に関する国連会議,通称『地球サ
    ミット』」の開催(1992年)等もあり,本問題
    に対し内外における関心は高いものがあった。
    視野を踏まえながら取り組むべきことが重要で
    あると指摘されていたが,(約10年が経過し
    た)今日までの「取組み」を振り返ると,着実
    に進展したところと必ずしもそうでない面とが
    混在する。そこで,今までどのような成果が得
    られ,現在どのような問題が存在するかをこの
    時点で整理し,紹介することとした。
    先ず取組みに関しては,世界的には国連主導
    の「国際政治面の検討」,「科学技術面の検
    討」,および「国内の政府と民間における取組
    まず第1の「国際政治面の検討」であるが,
    本問題は何よりも地球規模の問題であり,従っ
    て全世界の協力すなわち国際政治の取組みが重
    要である。特に枠組み議論の最初のものとして
    冒頭でも述べた1992年の「環境と開発に関する
    国連会議(地球サミット,第2回)」でまとめ
    られた「気候変動枠組み条約」がある。具体的
    内容は,同条約締約国会議(COP)で議論され,
    特に,1997年に京都で開催された同第3回会議
    義務付けし,国際間の取組み方法を明確とした
    議定書(京都議定書)を策定した点でその後の
    方向性を定めた画期的なものとなった。もっと
    も,その発効は,...

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