哲学のレポートで、デカルト『省察』における神の存在証明に反論するものです。
一部、卒論の参考になるかもしれません。
字数は全てで3687字程度です。
はじめに
ルネ・デカルトは『省察』(2006)の冒頭で、人間知の確実な基礎を打ち立てるにはいったん「あらゆるものを根こそぎ疑う」必要があると宣言した。感覚・身体・外界はもちろん、数の等式や幾何の定理までも、もし「私を欺く全能の悪神」が存在するなら誤りの可能性を免れない――これが同書の第一省察の急所である。したがって、以後で数学を含む学問を再確立するには、(A)そのような悪神など存在せず、(B)むしろ誠実に真理を保証する神が実在する、という点を揺るぎなく示さねばならない。同書の第三から第五省察で展開される三種類の神の存在証明(観念の因果論証・自己存在の保存論証・存在論的証明)は、この要請に応える...