ヒトラーを題材にした喜劇映画に関する分析をしています。
一部、卒論の参考になるかもしれません。
字数は全てで4323字程度です。
0 はじめに
喜劇について語るとき、私たちはしばしば「笑い」という直接的快楽に注目する。しかし古典以来、優れた喜劇は笑いの背後に哀しみや倫理的問いを潜ませ、観客に思索を促す芸術形式でもあった。とりわけブラック・ジョーク(black humour)は、深刻なタブー対象を笑いに包み込みながら、美しさや感動へ到達する稀有なジャンルである。本稿では、ヒトラー像の喜劇的変奏を題材に、①ブラック・ジョークが成立する語りのメカニズム、②笑いと哀しみの交錯が生む審美的効果、を検討し、喜劇の本質を再考する。
1 ヒトラーが喜劇化される手法と効果
オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の『ヒトラー~最期の12日間~』...