慶應通信の2024年度の哲学の課題の合格レポートです。
2025年度まで提出可能です。
哲学 2024
はじめに
「知識とは何か」という問いは、哲学において古代より議論され続けてきた問題である。知識は単なる信念とは異なり、真であり、かつそれが正当化されていなければならないという考え方が、20世紀中頃までの主流な定義であった。このような知識の三条件説(真なる信念であり、正当化されていること)に基づく議論において、「正当化」とは何によって担保されるのかという問題が生じる。正当化の構造をどう捉えるかは、知識論の中心的課題の一つであり、この問題に対して「基礎づけ主義」は一つの有力な回答を与える理論である。
本稿では、知識の基礎づけ主義とは何かを明らかにし、それに対する代表的な批判や代替理論との比較を通して、その意義と課題を明らかにする。
1.基礎づけ主義の基本的枠組み
基礎づけ主義とは、信念の正当化には「基礎的信念(basicbeliefs)」と、それに依存する「非基礎的信念(non-basicbeliefs)」との構造があるとする立場である。基礎づけ主義の主張の根底には、「正当化の無限後退問題」がある。すなわち、ある信念を正当化するために別の信念が必要とされ、その信念も...