類似科目名で債権総論があります。こちらのレポートは債権各論ですのでご注意ください。
債権各論 2025年
1.
序論:有償契約と無償契約の基本的区別
契約は、当事者間の意思表示の合致によって成立し、当事者に一定の法律効果を生じさせる法的行為である。その契約は、反対給付の有無を基準として、有償契約と無償契約に分類される。有償契約とは、売買契約や賃貸借契約等の当事者の一方が給付を受ける代わりに対価を支払う契約をいう。これに対し、無償契約とは、当事者の一方が他方のために自己の財産上の利益を無償で供与する契約であり、その典型が贈与契約である。
この区別は、契約の拘束力や当事者の責任の軽重に密接に関係している。本稿では、有償契約と無償契約を具体例を用いて比較し、その相違点を法的観点から整理する。
成立要件の比較
契約の成立における要件には、有償・無償によって差異がある。売買契約は典型的な有償契約であり、諾成・双務契約として、買主と売主の意思の合致によって成立する(民法第555条)。一方、贈与契約は原則として諾成契約であるが、書面によらない贈与は各当事者が履行を完了するまでは撤回可能とされる(民法第550条)。
これは、贈与契約の拘束力が売買契約に比べて弱いことを意味する。贈与...