中央大学法学部通信教育課程 2022年度刑法各論レポート第3課題
課題3
被告人Xは、公務員たる供託官A作成名義の真正な供託金受領証から切り取ったA供託官の記名印および公印押捺部分を、虚偽の供託事実を記載した供託書用紙の下方に接続させてこれを電子複写機で複写する方法により、あたかも真正な供託金受領証の写しであるかのような外観を呈する写真コピーを作成し、行使した。
Xの罪責を論じなさい。
1 文書偽造罪について
文書偽造罪の保護法益は、文書に対する公共の信用であり、公文書と私文書に分けている。文書偽造の保護の対象は、文書の形式の真正(形式主義)か、その内容の真正(実質主義)の2つの立場がある。形式主義とは、保護の対象を文書の形式的真実、すなわち、文書の「作成名義の真正」と解する立場があり、実質主義とは、保護の対象を文書の実質的真実、すなわち文書の「内容の真正」と解する立場をいう。わが国の刑法典は、形式主義(有形偽造)を採用(大判大正4・9・21刑録21・1390)し、文書の内容の真実性も重要ではあるが、まずは、作成者が誰かが第1次的に重要となる。
本事例では、有印公文書偽造罪(行使の目的で偽造した公務所の印章や署名を使用して公文書を偽造する行...