中央大学法学部通信教育課程 2022年度刑法各論レポート第2課題
課題2
Aはバスに乗るため、同じバスを待つ人で作られている行列に並び、自分のすぐ近くにあった台の上に、持参していたカメラに置いた。その後、行列がバスの入り口に向かって動き始めたので、Aは、置いたカメラを置き忘れたことをすっかり失念いたまま、行列に従って移動した。Aは、バスの入り口の手前まで来たとき、カメラを置き忘れたことに気付き直ちに引き返したが、カメラはすでにXによってその場から持ち去られていた。行列が動き始めてからAが引き返すまでの時間は5分、カメラを置いた場所とAが引き返した地点との距離は約20メートルであった。
Xに窃盗罪(刑法235条)は成立するか、論じなさい。
1 論点
窃盗罪は、他人の占有する他人の所有の財物を占有者の意思に反して取得する犯罪である。窃盗罪が成立するためには、財物が「他人の占有」下にあり、その占有を移転し、取得することが必要であり、問題となるのが、占有の存否である。占有があればそれらを持ち去る行為は窃盗罪となるし、占有がなければ占有離脱物横領罪となる。
2 占有の存否
窃盗罪における占有は、客観的要件として、財物に対する事実的支配(占有の事実)と...