中央大学通信教育課程 2022年度刑法総論レポート第3課題
課題3
甲は、映倫管理委員会の審査を通過した映画を上映したが、その映画は刑法上のわいせつ図画に該当するものであった。甲は、上映に際して、映倫を通過しているので、上映は法律上許されていると誤信していた。なお、これまで映倫制度が発足して以来、審査を通過した映画で、わいせつ図画に当たるとして起訴されたことはなかった。判例及び学説を踏まえ、甲の罪責を論ぜよ。
1 罪刑
わいせつ図画公然陳列罪(刑法175条)に該当するか否かについて検討する。
2 違法性の意識の要否
当該行為は、わいせつ図画公然陳列罪の構成要件は満たしているが、甲は上映を法律上許されていると誤信している。刑法38条1項は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りではない。」と規定して、故意犯処罰を原則としている。この故意の要件として、犯罪事実の認識・認容のほかに、違法性の意識を必要とするかどうかについては学説が分かれている。違法性の意識とは、自己の行為が法秩序によって許されていないことを知っているということで、「悪いことをしている」という意識である。我が国の刑法は、「法律を知らな...