中央大学通信教育課程 2022年度刑法総論レポート第2課題
1.不真正不作為犯について
不真正不作為犯とは、実行行為につき作為の形式で規定されている構成要件を不作為に
よって実現する場合をいい、殺人罪の構成要件に該当しない行為であるから、殺人罪は成立しないのではないかとの疑義が生じる。不真正不作為犯を、作為義務違反を介して禁止規範に違反するものとして作為犯に包括することは、作為犯の規定の類推解釈にほかならず、罪刑法定主義違反であるとする批判がある。しかし、不作為犯の形態における犯罪現象は現実に存在するし、その当罰性を否定することも妥当とは思われない。殺人罪の構成要件は、作為・不作為の両者を含むものと解すべきであり、不真正不作為犯の容認は、作為犯の類推解釈でもなく、また、罪刑法定主義違反でもない。不作為は単に何もしないということではなく、法的義務に積極的に違反することで、結果が発生する現実的危険性のある行為である。
2.不真正不作為犯の成立要件
1)法的作為義務の存在
行為者に結果の発生を防止すべき行為をする法律上の義務がある。
真正不作為犯の場合、構成要件において、構成要件該当行為として定められているので、作為義務の内容を特定するのが容易であ...