中央大学通信教育課程 2022年度法学入門レポート第2課題
1.本問検討の意義
今日の日本の法体系は、実定法を中心としたヨーロッパの近代市民社会を範とする。市民社会の要請の下、成文法は主たる「形式的法源」として様々な法分野を形成してきた。かかる成文法は、内容から主に私法と公法に分類されて現在に至っている。元来は不文法が主で、法は「在るもの」「発見されるもの」とされていたが、現代では、「作られるもの」として、成文法を主たる法源としている。
成文法のなかでも、特に公法や刑事法は権力作用の確固たる正当化を必要とする領域であり、国家が公権力の行使にあたって、権力を専断的に濫用しないよう抑制する必要がある。このことから「何が公法の領域か」よりも「なぜ、公法の領域設定をする必要があるか」「公権力(統治権)を有する国家とはいかなるものか」に論点を置いて、公法・私法・刑事法の異同を論じる。
2.私法と公法の歴史的関係
1)19世紀前半までの関わり
近代市民社会の論理(自由で平等な市民)を徹底していた英米法系諸国においては、公法という領域は存在しておらず、国は市民に対して消極的であった(夜警国家観)。私人の社会活動の自由な展開を支えるための私法は重要であるが...