佛教大学 通信M5103 (認定科目名:京都と文学(古典))
設題第一点目に著者である鴨長明という人物の経歴などや『方丈記』の文学史的位置付け(成立やジャンルなど)をまとめよ~鴨長明が『方丈記』の中で、どのように捉えているかを、鴨長明自身の「方丈」での生活の描写などとも関連させて考察せよ。
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1.鴨長明の経歴
鴨長明は平安末期の1155年に生まれた。世はまさに動乱の時代で、保元の乱、平治の乱と相次いで戦乱が起こり、人々のあいだでは諸行無常、厭世観が高まっていた。このような世相に起った安元の大火、冶承の辻風、福原遷都、養和の飢饉などの天変地異は、長明の精神に大きな影を投げかける事となった。
長明は賀茂御祖神社の次男として生れた。父の長継は正禰宜惣官であった。賀茂御祖神社は日本で最も高い格式を誇る神社のひとつで、正禰宜惣官とはこの神社の最高位であった。長明は、賀茂神社の式年遷宮が行われた7歳の時に神職の修行に入り、従五位下に叙せられるなど、大変恵まれた環境で幼少期を過ごした。長明が18歳の頃に父が急死する。父という後ろ盾を失った長明には、力のある後見人がおらず、長明は親族との相続争いに敗れ、禰宜の職は親族に移ってしまった。長明は悲嘆したが神官の職を辞したわけではなかった。しかしその社務には殆どかかわらず、もっぱら琵琶と和歌に没頭していった。やがて長明の和歌は、徐々に評価されていった。長明が47歳の時に後鳥羽院に認められ、「新古今和歌集」の選者である「寄人」に任命される。こ...