ヘレニズム時代における哲学には様々な学派があるが、本レポートではそのうち3つの学派について論じる。
1 まず、アテナイの広場を囲む四辺のうち、北東側に彩色柱廊(ストア・ポイキレー)があり、紀元前三世紀ごろにキティオンのゼノンがその柱廊を歩き回りながらその場で哲学の講義をし始めたのがきっかけで始まった学派とその学説は、その場から名を得て「ストア派」と呼ばれるようになった。
ストア派の対象とする学問は、論理学(ロギコン)、自然学(フュシコン)、倫理学(エーティコン)の3つに分けられる。また、ストア派の哲学は倫理学が白身、論理学が卵の殻、自然学が黄身という風に卵に例えられる。三つの学問分野に共通しているのは、ロゴスに即すこと、合理性である。
ストア派における論理学では、認識は3段階でされると考えられていた。まず、①感覚対象からの作用を魂への刻印として全面的に受容し、②①の表象に対し、誤り得ないほど明証的に把握された表象として知覚され、③把握的表象をロゴスによって承認することで、その対象がなんであるかという認識に至る。そして、ストア派では、原因はすべて言表内容(レクトン)で、結果は原理的に...