詐害行為取消権

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    資料紹介

    ~債権者取消権の法的性質について~
    一 はじめに
     債権者取消権の要件をみたした場合、いかなる効果が認められるか。
    具体的には、①債権者は誰に何を請求しうるか、②債権者が取り戻せる財産はどの範囲か、③取消債権者は自らへ返還するよう請求できるか、という三点が問題となる。
    二 債権者は誰に何を請求できるか(債権者取消権の法的性質)
    詐害行為取消権を行使しようとする場合、債権者は具体的には誰を被告として何を請求できるのだろうか。特に、目的物が転得者のもとにある場合、受益者を相手に価格の賠償を求めることができるか、詐害行為取消権の法的性質に関連して問題となる。
    どの考え方を採るかによって、この権利を誰に対して(誰を被告として)行使するか、いかなる請求をするか、取消権の効果をどのように解するか等の相違が出てくる。
    三 学説の対立
    1 取消権
    詐害行為取消権は、債務者の行為(詐害行為)を取り消してこれを無効にすると考える説であり、ドイツの物権説及びわが国の形成権説がこれに当たる。
    ⑴ 物権説
    この説は、取消しを一般の法律行為の取消しに関する民法142条のそれと同一の意義に解し、その法律的な性質は形成権であるという。取消しの結果、物権的効力を生ずるとするところから、物権説の名がある。ただし、取消権の行使は、一般の取消権の行使と同じく、裁判外の一方的意思表示によってもこれをなし得るとするから、その訴えは、形成の訴えとはならない。また、取消しの効果は、なん人に対しても無効を主張し得る絶対的なものではなく、債権者に対する関係でのみ無効であると解する。
    ⑵ 形成権説
    形成権説によると、民法424条は「法律行為の取消し」といっているから、詐害行為取消権は、債務者の法律行為を取り消す権利であることは明らかである。この取消しは、無能力や意思表示の瑕疵などに基づく法律行為の取消しと同一の性質と効力を有するものといわなければならないという。ただし、この説は、取消権の行使は必ず訴え(形成訴訟)をもってしなければならず、取り消された法律行為は絶対的に無効であるとする点で物権説と異なる。
      形成権説に対しては、この説は民法424条の「法律行為の取消しを裁判所に請求することができる」という文字に最もよく適合するが、この説によると、詐害行為を取り消した結果、受益者又は転得者は法律上原因なく債務者の財産を保有し、債務者に対して不当利得としてそれを返還する義務を負うこととなるのにとどまるから、債務者が自ら返還請求をしないときには、債権者は、これを債務者の財産として取り戻すため、さらに債権者代位権を行使して訴えを提起しなければならない不便があるばかりでなく、債務者の法律行為を絶対的に無効とするから、不当に取引の安全を阻害する、などの批判がある。
    2 債権説
     債権説は、詐害行為取消権をもって債務者の行為の効力を消滅させることなく、ただその行為によって減少した財産の返還を請求する権利であると解するものである。したがって、その訴えの形式は給付の訴えとなり、その効力は相対的であるとする。この返還請求権を発生させる前提として、債権者が受益者又は転得者に対して、特段の意思表示を要するか否かによって、純債権説と否認債権説との区別がある。
    ⑴ 純債権説
    詐害行為取消権が、沿革上逸出財産の返還請求権であったことなどから、この権利の性質を請求権であると解するものである。受益者又は転得者に対する目的財産の返還請求権は、法律に定められた要件の成立と同時に発生するもので、形成的な特別の意思表示とか、返還を命ずる判決

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    ~債権者取消権の法的性質について~
    一 はじめに
     債権者取消権の要件をみたした場合、いかなる効果が認められるか。
    具体的には、①債権者は誰に何を請求しうるか、②債権者が取り戻せる財産はどの範囲か、③取消債権者は自らへ返還するよう請求できるか、という三点が問題となる。
    二 債権者は誰に何を請求できるか(債権者取消権の法的性質)
    詐害行為取消権を行使しようとする場合、債権者は具体的には誰を被告として何を請求できるのだろうか。特に、目的物が転得者のもとにある場合、受益者を相手に価格の賠償を求めることができるか、詐害行為取消権の法的性質に関連して問題となる。
    どの考え方を採るかによって、この権利を誰に対して(誰を被告として)行使するか、いかなる請求をするか、取消権の効果をどのように解するか等の相違が出てくる。
    三 学説の対立
    1 取消権
    詐害行為取消権は、債務者の行為(詐害行為)を取り消してこれを無効にすると考える説であり、ドイツの物権説及びわが国の形成権説がこれに当たる。
    ⑴ 物権説
    この説は、取消しを一般の法律行為の取消しに関する民法142条のそれと同一の意義に解し、その法律的な性質は形...

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