「わが国における障害者雇用の現状と課題についてまとめ、あなたの考えを述べなさい。」
1.障害者雇用の現状
(1)障害者雇用率制度と雇用納付金制度
障害者雇用率制度とは、一定以上の労働者を雇用している事業主に対して、一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用する義務を課す制度である。一般の民間企業では、1.8%、国・地方公共団体では、2.1%である。
この雇用率制度は、障害者の雇用の進展をはかるため1960年に「身体障害者雇用促進法」が制定された際、同法の理念を実現するための具体的な手段として定められた。この法律では、全雇用者(常用労働者)の1.3%を身体障害者とすることを「努力義務」とした。その後、1976年の法改正によって、法定雇用率が「努力義務」から「法定義務」となった。さらに1987年の法改正で「障害者の雇用の促進等に関する法律」となり、すべての障害者が対象となった。1993年には、重度知的障害者のダブルカウント制度(1人の雇用をもって2人の雇用とみなす)が導入され、また短時間労働(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)の重度身体・知的障害者が雇用率の対象となった。その後1997年、知的障害者が法定雇用率の算定基礎の対象となった。また、雇用率も法改正がなされるごとに見直しが行われてきた。
この雇用率制度は、「障害者雇用納付金制度」と一体となっている。障害者雇用納付金制度では、法定雇用率に満たない事業所が納付金を支払い、この納付金をもとに、障害者を雇用している事業所に助成金が出される。
わが国の障害者雇用は、雇用率制度と雇用納付金制度を柱に進められてきた。しかし、現実的には雇用率未達成企業の割合は、約50%と非常に高く、特に企業の規模が大きくなるほど未達成の割合が高い。
(2)特例子会社制度
特例子会社は、障害者雇用促進法により設けられた制度で、規模の大きな民間企業における障害者雇用を進めるためのものである。1977年度に2社が認可され、その後の設立要件の緩和によって114社が設立され、約2,800人が雇用されている。
この制度は、特例として障害者の雇用に特別に配慮した子会社をもつ場合、一定の要件のもとで子会社と親会社の労働者を合わせて雇用率を適用することを可能とした。
特例子会社の利点として、障害者にとっては、職域が広がるとともに配慮された職場環境の中で能力を発揮しやすくなる等がある。一方、企業にとっても社会的責任を果たせることで社会的イメージや信頼度が増す。さらに障害者に配慮した職場環境や障害特性に応じた業務の再編が行いやすくなる等がある。
(3)福祉工場
社会福祉法人が設置運営する事業所であり、法的には授産施設のひとつである。一般雇用が困難な障害者が対象となる。しかし、利用者は従業員と位置付けられ雇用契約が結ばれ、労働関係法が適用される。
身体障害者福祉工場、知的障害者福祉工場、精神障害者福祉工場を総称して福祉工場という。福祉工場は、身体36ヵ所、知的61ヵ所、精神17ヵ所の計114ヵ所あり、3,154人の障害者が働いている。(2003年10月)
しかし、経済情勢の状況を反映した受注量の減少や工賃単価の値下げ、さらに最低賃金の適用除外等の厳しい状況も見られる。
この福祉工場に類似した制度として、諸外国、特にヨーロッパでは「保護雇用」という制度を確立し、多くの実績を積んでいる。保護雇用制度は、一般就労を最終目標とした職業リハビリテーションでもある。保護雇用では障害者は一般企業と同じ条件の下で労働でき、障害
「わが国における障害者雇用の現状と課題についてまとめ、あなたの考えを述べなさい。」
1.障害者雇用の現状
(1)障害者雇用率制度と雇用納付金制度
障害者雇用率制度とは、一定以上の労働者を雇用している事業主に対して、一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用する義務を課す制度である。一般の民間企業では、1.8%、国・地方公共団体では、2.1%である。
この雇用率制度は、障害者の雇用の進展をはかるため1960年に「身体障害者雇用促進法」が制定された際、同法の理念を実現するための具体的な手段として定められた。この法律では、全雇用者(常用労働者)の1.3%を身体障害者とすることを「努力義務」とした。その後、1976年の法改正によって、法定雇用率が「努力義務」から「法定義務」となった。さらに1987年の法改正で「障害者の雇用の促進等に関する法律」となり、すべての障害者が対象となった。1993年には、重度知的障害者のダブルカウント制度(1人の雇用をもって2人の雇用とみなす)が導入され、また短時間労働(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)の重度身体・知的障害者が雇用率の対象となった。...