「乳幼児期から老年期に至るまでの発達の特徴やプロセスについて述べなさい。」
発達は英語でdevelopmentという。これには開発、といった意味もあるが、ここでいう発達というのは、「その人がそこにいたるまでの道筋」である。今までの発達心理学は主として「子供から大人への変化」がメインなテーマとなっていた。そのため、幼児が母親に対して抱く愛着や、思春期におけるアイデンティティの獲得など、専門以外の人にも大きく知られるような事柄が多く言われてきた。
もともと発達心理学は児童心理学や青年心理学から分かれて大きくなってきた分野であるため、ミクロスケールでものを見ていたわけである。しかし、1970年代に「環境との相互作用」という見方が取り入れられたことで、文化や時代といったものも発達に影響することが認識され、生涯を通じての変化、というものが考えられはじめた。そして今の発達心理学は「生まれてから死ぬまで」を対象とした「生涯発達心理学」へと発展したのである。
この大きなポイントは中年期や老年期といった、比較的今まで議論の対象となっていなかった時期を含めて、「人の一生の道筋」を研究するようになったことである。そもそも発達という言葉にはよりよい状態へと適応していくという、前向きな変化の意味がある。それを今までは青年期で区切って、あとはないものと考えてきた。たしかに中年期以降は必ずしもすべてが「前向きな変化」ではない。、いわゆる老化などのマイナス面も増えるのは事実である。こうした変化を、衰退や老化といったマイナス面で捉えるのか、加齢現象として価値は置かないのか、はたまた、成熟という意味でプラスに捉えるのか、これが生涯発達というときの、かなり大きなキーとなる。少なくとも生涯発達心理学では、「人は一生発達する」ということがモットーとなっている。
発達段階説にはピアジェの「認知発達段階説」、フロイトの「性愛説」など代表的なものがある。今回はそれらの中でエリクソンの「漸成発達説」を取り上げる。エリクソンは下記のような、人間の誕生から死に至る人生のサイクルを八つの段階と考えた。それぞれの段階において社会から課せられるライフ・タスクをその個人がどのように解決していくか、あるいは、そこでの心理社会的危機をどのように乗り切るかによって、パーソナリティのあり方が決まってくる、とした。
・第一段階 「乳児期」 (0~1歳頃)
人生の最早期の発達課題は、「基本的信頼対不信」である。これから自分が、生きていく外界は信頼できるのか、あるいは、自分自身は信頼できるのかといった、人間の心の発達においてもっとも重要、かつ基本となる課題である。
乳児は、自分の欲求に適切に応えてくれる環境(授乳、おむつ交換、心地よい睡眠の保証など)から、身体的安全や精神的安定を得ることができる。そういった日常の育児、つまり母親との関係を通して、外界への信頼や自己への信頼を築くことができるのである。一方、母親が乳児の欲求を拒否したり、適切に応じることができない場合には、外界や自分自身への不信につながることになる。
・第2段階 「幼児期前期」
(1~3歳頃)
この時期のテーマは、トイレットトレーニングを中心とした「しつけ」である。そこには、親の命令や禁止を自分のものとして、内在化するプロセスがみられる。エリクソンは、この時期の発達課題を「自立性対恥・疑惑」として、肛門括約筋を“意思の力で使う”ことを学ぶと述べている。一方、しつけなどの外的環境からの規制が強すぎると、恥による劣等感や自分の価値に対する疑惑を、深める結果とな
「乳幼児期から老年期に至るまでの発達の特徴やプロセスについて述べなさい。」
発達は英語でdevelopmentという。これには開発、といった意味もあるが、ここでいう発達というのは、「その人がそこにいたるまでの道筋」である。今までの発達心理学は主として「子供から大人への変化」がメインなテーマとなっていた。そのため、幼児が母親に対して抱く愛着や、思春期におけるアイデンティティの獲得など、専門以外の人にも大きく知られるような事柄が多く言われてきた。
もともと発達心理学は児童心理学や青年心理学から分かれて大きくなってきた分野であるため、ミクロスケールでものを見ていたわけである。しかし、1970年代に「環境との相互作用」という見方が取り入れられたことで、文化や時代といったものも発達に影響することが認識され、生涯を通じての変化、というものが考えられはじめた。そして今の発達心理学は「生まれてから死ぬまで」を対象とした「生涯発達心理学」へと発展したのである。
この大きなポイントは中年期や老年期といった、比較的今まで議論の対象となっていなかった時期を含めて、「人の一生の道筋」を研究するようになったことで...